発議案第3号 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律の改正を求める意見書
議決日:令和5年7月7日
議決結果:原案可決
性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(以下、「LGBT理解増進法」という。)が性的指向や性自認に関する取り組みを阻害する動きに使われることなく、同法第3条の基本理念に則った取り組みが進められるよう法改正を行うことを強く要望する。
理由
令和5年6月16日、参議院本会議において、LGBT理解増進法が成立し、同年6月23日に公布、即日施行されることが決定された。
しかし、LGBT理解増進法案は令和3年に「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」との文言を盛り込んだ超党派の議員連盟で合意に至ったにもかかわらず、その内容は理解増進とはかけ離れ、理解を阻害する内容になっている。
同法案中「差別は許されない」が「不当な差別はあってはならない」と書き換えられ、国に義務付けた調査研究が学術研究に置き換えられ、「民間団体の自発的な活動の促進」も削除されるなど、法案は大きく後退させられ、とりわけ、同法第12条に「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」と、LGBTQ+当事者の尊厳を踏みにじるかのような文言が入り、政府が具体的な指針を策定するものと規定されたことは重大である。
そもそも差別は不当であるにもかかわらず、不当でない差別が存在する余地を法的に残し、すべての国民の安心のために、いじめや差別の原因となる無理解を擁護、温存することにつながり、LGBTQ+当事者の人権が抑制、侵害されかねない。
同法を根拠に、民間団体の活動が国民に不安を与えているというような理由付けをされ、活動を規制される可能性もある。同法第3条の「全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」という基本理念と明らかに矛盾し、法の効果を真逆に転じさせるものであり、LGBTQ+当事者が直面している生きづらさ、差別、孤独は命に関わる問題である。
よって、国においては、今後、LGBT理解増進法が性的指向や性自認に関する取り組みを阻害する動きに使われることなく、真に基本理念に則った取り組みが進むよう同法について次の改正を行うよう強く要望する。
1 同法第3条中「不当な差別はあってはならない」との文言を「差別はあってはならない」と改め、差別禁止規定を明記すること。
2 同法第12条の留意規定を始め、同法第10条第3項中「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」など理解促進を制限、阻害しうる文言を削除すること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。