発議案第2号 民法第772条の嫡出推定に関する運用の見直し等を求める意見書
議決日:平成19年12月12日
議決結果:原案可決
意見書提出先:衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務大臣
民法第772条の嫡出推定に関する運用の見直し等を求める意見書
子どもの人権を守るため、離婚前妊娠の場合であっても社会通念上やむを得ないと考えられるものについては、現在の夫の子として出生届を受理するなど、民法第772条の嫡出推定の運用を見直し、当面の救済の範囲を広げるとともに、家裁手続きの簡素化や嫡出推定に係る民法等の改正の検討を行うよう強く要望する。
理由
民法第772条第2項には「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と規定し、「嫡出推定」の規定を定めている。この規定は、もともとは法律上の父親を明らかにして子どもの身分を早期に安定させるものであるが、民法制定から100年以上たった今、離婚・再婚をめぐる社会情勢は大きく変化し、当該規定は、時代に合わなくなっており、戸籍法や婚姻に関する法律との整合性も考え法改正を検討していく必要がある。
現在、民法第772条第2項の規定では、新夫との間にできた子どもであっても、離婚後300日以内の出生であれば、前夫の子として推定され、前夫の戸籍に入ることになっているため、実父でない者が父親とされることを嫌って、出生届を出さず、そのため無戸籍となっている子供がいるところである。
こうした子どもを救済するため、法務省は今年5月に通達を出し、離婚後妊娠の場合に限り、医師の証明を添付することで、現在の夫の子として出生届を受理する特例措置を実施したところであるが、この特例措置で救済されるのは全体の1割程度であり、圧倒的に多い離婚前妊娠の場合は対象外とされており、救済の範囲を広げる必要がある。
また、離婚前妊娠に関しては、離婚に伴う父子関係の不存在、嫡出否認等については、家庭裁判所の調停・審判の手続きによることとなるが、手続きに時間がかかる場合が多いことから、手続きを簡素化し、運用を見直すなどして救済する必要がある。
よって、国においては、子どもの人権を守るため、離婚前妊娠の場合であっても社会通念上やむを得ないと考えられるものについては、現在の夫の子として出生届を受理するなど、民法第772条の嫡出推定の運用を見直し、当面の救済の範囲を広げるとともに、家裁手続きの簡素化や嫡出推定に係る民法等の改正を検討するよう強く要望する。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。