発議案第4号 農地取得の規制緩和に反対し、優良農地の確保と有効利用を求める意見書
議決日:平成20年12月10日
議決結果:原案可決
意見書提出先:衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、農林水産大臣
農地取得の規制緩和に反対し、優良農地の確保と有効利用を求める意見書
国の責任による農地の確保と耕作者の権利擁護の強化、さらには多面的意義を発揮する農村再生ビジョンの構築に向けて、特段の措置を講ずるよう強く要望する。
理由
農地は「国民の共有財産」であり、食料自給率の向上や食料の安定供給に欠かせない国家資源であり、地域の環境資源、農家の経営基盤として大きな役割を果たしている。
国はこれまで、農業生産法人の要件緩和や特定法人貸付事業による「リース事業」の全国展開などの規制緩和を進め、株式会社の農業参入の道を拡大してきたが、昨年、「農地政策の展開方向について」を決定し、農地法改正の準備を進めている。
耕作放棄地の解消や優良農地の確保は喫緊の課題ではあるものの、所有から利用への転換は、そもそもの目的を逸脱した方向へ導くものとして、危惧される政策である。
これまでの規制緩和ですら、都道府県段階での違反転用や仮登記による事実上の第三者転売、更には産業廃棄物の不法投棄など環境破壊の実例が明らかになっているにもかかわらず、農地法の規制を緩め、土地利用が自由化されれば、「農地は耕作者が所有する」という理念は骨抜きとなり、農村自体の質的変容を助長し、生態系など環境資源としての農地の存在もまた危機にさらされ、さらに家族農業を中心とする地域社会の激変も懸念される。日本農業の構造的変質をもたらすものとして、極めて危険な政策方向である。経済界が要求し続けてきた所有と使用の分離論は、単なる政策的選択ではなく、農業政策の本質論にほかならない。
よって、国においては、国の責任による農地の確保と耕作者の権利擁護の観点から、さらには多面的意義を発揮する農村再生ビジョンの構築が不可欠であり、安易な農地政策を選択することのないよう、次の措置を講ずるよう強く要望する。
1 株式会社による農地の取得、長期貸借制度に関する規制緩和は認めず、生産法人による農業参入要件については厳しく監視し、これを維持するとともに、耕作放棄地解消のため、農地の集落利用・市町村管理システムを確立すること。
2 耕作目的外の農地の権利取得を排除するため、権利移動規制を引き続き堅持するとともに、農地転用許可制度や農業地域振興制度を厳格化し、転用許可事務について国の関与を高め是正指導や罰則強化などの措置を講じること。
3 農地の確保に関し、所有者・使用者の責務、国や地方自治体の役割・機能を明確に規定し、耕作放棄地の解消及び減反農地の有効利用に向けた総合的かつ具体的な支援策を提示するとともに、市民やNPO等の関与や農地の保全管理に関する支援策と予算措置を拡充すること。
4 農業委員会による農地の監視や利用調整活動など、その機能を堅持し、態勢強化のための措置を講じること。
5 中山間地域直接支払制度は恒久化して予算拡大し、農地・水・環境保全向上政策を拡充し、将来的には「環境支払い」としての制度創設を行うこと。
6 農地の相続税納税猶予制度は、自作地だけでなく、農地利用が続いている貸付地にも認めること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。