発議案第9号 WTO農業交渉、日豪経済連携協定(EPA)交渉に関する意見書
議決日:平成21年3月25日
議決結果:原案可決
意見書提出先:衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、外務大臣、農林水産大臣、経済産業大臣
WTO農業交渉、日豪経済連携協定(EPA)交渉に関する意見書
日本の食料と地域の農業・農村・暮らしを守り、食料輸入国や途上国における食料主権、多面的機能、多様な農業の共存を維持するため特段の配慮を強く要望する。
理由
米国が主導するWTO農業交渉(ドーハ・ラウンド)は、市場原理による食のグローバル化をめざし、鉱工業製品と同様に農産物の保護削減の基準を決め、自由貿易を進めるものである。
2008年7月の交渉では、食料輸出国と輸入国の対立から土壇場で交渉が決裂し、また、2008年11月15日には、主要20カ国・地域(G20)の緊急首脳会合(金融サミット)が年内合意を求める宣言を出したことを契機に、12月6日にはモダリティー第4次改定案が提示されたところであり、2008年内の閣僚会議の開催は農業と非農業分野での対立により見送られたが、交渉の再開・早期の妥結が危惧されている。
国は、関税の大幅削減の対象から除外できるコメなど、重要品目の数を10%以上確保する姿勢から、モダリティー案の「原則4%、条件・代償付きでプラス2%」を受け入れるかのような姿勢を見せており、当時の若林農水大臣は談話で食料輸入国の立場で交渉の成功に貢献する決意を示し、また、昨年の金融サミットでは自由貿易体制の重要性を強調し、ドーハ・ラウンドを2008年中に大枠合意に持ち込むこととされたこと等から、農産物の関税削減などに対する国民や農業者の不安が高まっている。
一方、日豪経済連携協定(EPA)交渉は、2008年の10月までに7回開催されているが、豪州の主な輪出農産物は、日本の重要品目である牛肉、小麦、砂糖及び乳製品と競合しており、農業生産の規模・効率性がケタ違いな両国の間で自由競争は成り立たない。仮にこれらの関税が撤廃されると、豪州から大量に農産物が輸入され、日本の重要品目の農業生産額は減少し、日本農業は壊滅状況になることが想定され、さらには、米国やカナダ、EUなどとのFTA交渉につながるおそれもある。
世界的な食料危機が迫る中、2008年6月の食料サミットでも、食料安全保障は恒久的な国家の政策であるとし、食料生産の強化、農業投資の拡大が宣言されており、日本でも食料自給率の向上、食料生産体制の強化が重要な課題となっている。
よって、国においては、日本の食料と地域の農業・農村・暮らしを守り、食料輸入国や途上国における食料主権、多面的機能、多様な農業の共存を維持するため次の事項を強く要望する。
1 日豪EPA交渉に当たり、我が国の農業及び関連産業の持続的発展と食料の安全保障を確保するため、国民の基礎的食料である牛肉などの重要品目は関税撤廃の除外とし、国内農業を守るよう全力を挙げて交渉すること。なお、重要品目の柔軟性について十分な配慮が得られないときは、交渉の継続について中断も含め、強い姿勢で望むこと。
2 ドーハ・ラウンドでは、コメなど重要品目の十分な数を断固確保すること、食料輸出国による関税の上限設定を絶対に阻止し、低関税輸入枠の拡大は認めないこと、先進国で最低水準の食料自給率の向上や担い手確保に向けて国内生産の柔軟性を確保すること及び輸入の増加による国内農産物価格下落の対抗手段である特別セーフガード(緊急輸入制限措置)を維持・拡大することを講ずること。
3 行き過ぎた貿易市場主義、農産物の関税削減、国境措置、輪出国と輸入国の不均衡などを根本から見直し、自由貿易が輸入国や途上国の食料安全保障や一次産業を衰退させ、ひいては貧困化、高い環境負荷を招いていることなどを考慮し、食料増産や各国の農業基盤の強化、環境保全、食の安全など、農業の価値を高める公正かつ新たな貿易ルールの確立を追求すること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。