発議案第6号 岩手県口腔の健康づくり推進条例
議決日:平成25年3月26日
議決結果:原案可決
【政策的議員提案条例】
岩手県口腔の健康づくり推進条例
平成25年3月29日岩手県条例第36号
口腔の健康は、バランスのとれた食生活を可能とし、また、生活習慣病や誤嚥性肺炎の予防に寄与するなど、心身とも健やかで豊かな人生を送るうえで基礎的かつ重要な役割を果たしている。
本県ではこれまで、全国に先駆けて実施している8020運動や平成13年度に策定した健康いわて21プランにより、県民の口腔の健康づくりに取り組んできたが、乳幼児期及び学齢期においては、むし歯有病率が全国平均を上回るとともに、地域間に大きな格差が生じているほか、成人期においては、重度の歯周病にり患している者の割合が増加している状況にある。また、人口に占める高齢者の割合が全国平均を上回っている本県においては、高齢者の口腔の機能の維持及び向上への対策が急務となっている。このため、生涯を通じた口腔の健康づくりの一層の促進が求められている。
平成23年3月11日、本県の沿岸地域を襲った東日本大震災津波は、地域の歯科の診療施設に壊滅的な被害をもたらした。関係団体等による支援が行き届くまでの間、避難所での生活においては、口腔の衛生及び歯科医療の確保について困難を極め、改めて災害時における口腔の衛生の確保の重要性を強く認識した。東日本大震災津波により失われた口腔保健サービスの提供のための体制を早急に整備するとともに、平時から災害に備えた口腔保健サービスの提供のための体制を構築しておく必要がある。
ここに私たちは、県民一人ひとりが主体的に口腔の健康づくりに取り組むとともに、県民誰もが、居住する地域にかかわらず、適切な口腔保健サービスを受けることができる環境が整備されることにより、生涯にわたって食べる喜び、話す楽しみを実感できるなど、生き生きと安心して質の高い生活を送ることができる社会を実現することを目指し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、県民の口腔の健康づくり(口腔の健康を保持し、及び増進し、並びにその機能を維持し、又は向上させることをいう。以下同じ。)の推進に関し、基本理念を定め、並びに県、県民及び歯科医師等(歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士その他歯科医療又は保健指導に係る業務に従事する者をいう。以下同じ。)の責務並びに市町村及び保健医療等関係者(保健、医療、福祉、労働衛生、教育その他の口腔の健康づくりに関連する業務に携わる者であって歯科医師等を除いたものをいう。以下同じ。)の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定め、口腔の健康づくりを総合的かつ計画的に推進し、もって県民の健康の保持増進に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 口腔の健康づくりの推進に関する施策は、次に掲げる事項を基本として、行われなければならない。
(1)県民の主体的な口腔の健康づくりの取組を促進すること。
(2)県内の全ての地域において、生涯を通じて口腔保健サービス(歯科に係る検診(健康診査及び健康診断を含む。以下同じ。)、保健指導、健康相談その他の口腔の健康づくりに関するサービスをいう。以下同じ。)を受けることができる環境の整備を推進すること。
(県の責務)
第3条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、本県の特性に応じた口腔の健康づくりの推進に関する総合的な施策を策定し、及び実施するものとする。
(県民の責務)
第4条 県民は、基本理念にのっとり、口腔の健康づくりに関する正しい知識を持ち、理解を深めるよう努めるものとする。
2 県民は、適切な食生活の習慣を身につけること、定期的に歯科に係る検診を受けること及び保健指導を受けること等により、主体的に口腔の健康づくりに取り組むよう努めるものとする。
(歯科医師等の責務)
第5条 歯科医師等は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施する口腔の健康づくりの推進に関する施策に協力するとともに、保健医療等関係者との緊密な連携を図ることにより、適切な口腔保健サービスを提供するよう努めるものとする。
(市町村の役割)
第6条 市町村は、基本理念にのっとり、当該市町村の地域の特性に応じて県、歯科医師等及び保健医療等関係者と連携し、口腔の健康づくりの推進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。
(保健医療等関係者の役割)
第7条 保健医療等関係者は、基本理念にのっとり、それぞれの業務において、口腔の健康づくりに取り組むとともに、県及び市町村が実施する口腔の健康づくりの推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、雇用する従業員の歯科に係る検診を受ける機会の確保等口腔の健康づくりに取り組むよう努めるものとする。
3 保険者(介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第7項に規定する医療保険者をいう。)は、被保険者(同条第8項に規定する医療保険加入者をいう。)が歯科に係る検診を受けることを促進する等口腔の健康づくりに取り組むよう努めるものとする。
(口腔の健康づくりに関する基本的な施策)
第8条 県は、県民の口腔の健康づくりを推進するため、基本的な施策として、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1)妊婦及び乳幼児の歯科保健に係る相談、指導等に関すること。
(2)幼児、児童及び生徒のむし歯及び歯肉炎の予防対策に関すること。
(3)成人の歯周病の予防対策に関すること。
(4)高齢者及び介護を必要とする者の口腔の機能を維持し、又は向上させるための対策に関すること。
(5)障がいのある者のむし歯及び歯周病の予防対策並びに歯科に係る検診の体制の整備に関すること。
(6)県民の口腔の健康づくりの推進に携わる者の確保及び資質の向上に関すること。
(7)災害発生時における口腔の衛生の確保及び平時における災害に備えた口腔保健サービスの提供のための体制の確立に関すること。
(8)東日本大震災津波により被災した地域における口腔保健サービスの提供のための体制の整備に関すること。
(9)前各号に掲げるもののほか、県民の口腔の健康づくりの推進に必要な施策に関すること。
(実施計画)
第9条 知事は、県民の生涯を通じた口腔の健康づくりの推進に関する総合的な施策を策定し、及び実施するため、口腔の健康づくりの推進に関する実施計画(以下「実施計画」という。)を定めるものとする。
2 実施計画は、口腔の健康づくりに関する基本的な方針、目標及び施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項について定めるものとする。
3 知事は、実施計画を定めようとするときは、あらかじめ、県民の意見を聴かなければならない。
4 知事は、実施計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
5 前2項の規定は、実施計画の変更について、準用する。
(いい歯の日)
第10条 県は、県民の間に広く口腔の健康づくりについての関心と理解を深めるとともに、県民の主体的な口腔の健康づくりの取組を促進するため、いい歯の日を設ける。
2 いい歯の日は、11月8日とする。
3 県は、市町村、歯科医師等及び保健医療等関係者と連携し、8020運動(80歳になっても自分の歯を20本以上保つことを目標として口腔の健康づくりを進める運動をいう。)の普及啓発に努めるものとする。
(調査)
第11条 県は、口腔の健康づくりの推進に関する総合的な施策を実施するため、県民の口腔の保健の実態について、おおむね5年ごとに調査を行うものとする。
(市町村に対する支援)
第12条 県は、市町村が住民の口腔の健康づくりの推進に関する基本的な計画を定め、又は口腔の健康づくりの推進に関する施策を策定し、若しくは実施しようとするときは、必要に応じ、情報の提供、専門的な助言その他の支援を行うものとする。
(財政上の措置)
第13条 県は、口腔の健康づくりの推進に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
この条例は、平成25年4月1日から施行する。