発議案第3号 日本再興戦略に係る新たな労働時間制度への慎重な対応と過重労働防止対策等の充実を求める意見書
議決日:平成26年7月7日
議決結果:原案可決
意見書提出先:衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、厚生労働大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
日本再興戦略に係る新たな労働時間制度への慎重な対応と過重労働防止対策等の充実を求める意見書
政府は、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した新たな労働時間制度の創設を決めたが、この制度は立場の弱い勤労者に長時間労働をもたらし、労働の対価を失わせるものであり、慎重な対応と過重労働や過労死、過労自殺防止対策等の充実を強く要望する。
理由
政府は、本年6月に、労働時間に関係なく成果に基づき賃金を支払う新たな労働時間制度の対象について、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者とし、平成27年の通常国会で関連法案の提出を目指すとしている。
そもそも、年収や業務にかかわらず働いた労働時間に応じて賃金を支払うことは労働契約の大原則であり、労働基準法において労働時間が法定され、これを超える時間外・休日労働には割増賃金を支払わなければならないとされており、今回の制度はこれを排除しようとするものである。
新しい制度では、健康確保や仕事と生活の調和を図りつつ、無限定的な働き方を改善するとしているが、法定労働時間を撤廃し残業代という歯止めがなくなれば、成果が出るまで報酬につながらない長時間労働を誘発し、過労死や過労自殺、精神疾患などの健康障害が増加するおそれがある。
さらに、使用者が従業員の労働時間を管理する責任がなくなれば、過労で死亡しても責任を問われず、残業の概念がなくなれば過労死の認定も困難となる。労働者の同意が前提だとしても、使用者より弱い立場にあり労使交渉力の格差がある中で、同意を迫られた労働者がこれを拒否することは事実上困難である。制度が一旦導入されれば、年収要件の引下げや適用労働者の拡大が図られるおそれもある。
現在、過労死や過労自殺、精神疾患などの健康障害が問題となっており、超党派議連で提出した過労死等防止対策推進法が先の国会で可決成立した。
過重労働の改善や過労死・過労自殺を防止し、ワーク・ライフ・バランスの推進や労働生産性の向上を図るためには、まず勤務間インターバル規制や労働時間の量的上限規制などが検討されるべきである。
よって、国においては、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した新たな労働時間制度の導入への慎重な対応と、過重労働や過労死、過労自殺防止対策等の充実を強く要望する。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。