発議案第5号 認知症高齢者等の権利擁護に関する対策の充実を求める意見書
議決日:平成26年12月10日
議決結果:原案可決
意見書提出先:衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、法務大臣、厚生労働大臣、内閣官房長官
認知症高齢者等の権利擁護に関する対策の充実を求める意見書
認知症高齢者等の適切な財産管理や法律行為を支援するため、成年後見制度の充実と利用支援などの施策を講ずるよう強く要望する。
理由
成年後見制度は、認知症高齢者など判断能力が不十分な者の財産管理や法律行為の支援を目的として、平成12年4月に施行された。平成25年の申立件数は約34,500件であり、5年前に比較すると約8,000件増えている。
平成26年版消費者白書によれば、高齢者の消費生活相談件数は年々増加し、平成25年度は約267,000件となり、また、独立行政法人国民生活センターによると、60歳以上の認知症等高齢者の消費者トラブルに関する相談は、平成25年度に全国の消費生活センター等に約11,500件寄せられており、過去最多であった前年度から約1,850件増加している。厚生労働省研究班の報告書によれば、平成22年時点で65歳以上の高齢者のうち認知症有病者数は約439万人、軽度認知障害(MCI)有病者数は約380万人と推計されており、権利擁護の必要な高齢者に成年後見制度が十分浸透していないことが懸念される。
こうした中で、親族以外の第三者や、社会福祉協議会等の法人による成年後見が必要となる事例が増加してきており、市民後見人の育成や、法人による後見の促進などの支援体制の整備が急務となっている。しかし、成年後見制度の制度上の所管は法務省であるが、市民後見人の人材育成等は厚生労働省が実施しているなど、国として包括的に制度の運用を検討する体制が整っていない。
よって、国においては、誰でも利用しやすい成年後見制度とするため、次の事項を実施するよう強く要望する。
1 省庁間の連携等制度の運用を包括的に検討する体制を整備し、今後の方向性を示すとともに、各省庁、地方自治体及び民間団体の役割を明確にすること。
2 成年後見制度の周知を積極的に図ること。
3 資力の有無に関係なく制度が利用できるよう成年後見制度利用支援事業の財政的支援を充実させること。
4 市民後見人の育成や、法人による後見の促進などの支援体制の整備と、これに必要な財源を確保すること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。