発議案第11号 認知症への取組の充実強化を求める意見書
議決日:平成31年3月25日
議決結果:原案可決
意見書提出先:衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、内閣官房長官
認知症への取組の充実強化を求める意見書
認知症の人にやさしい地域づくりを推進するため、認知症への取組の充実強化を図るよう強く要望する。
理由
今日、認知症は世界規模で取り組むべき課題であり、平成27年3月に開催された認知症に対する世界的アクションに関する第1回WHO大臣級会合では、各国が認知症対策への政策的優先度をより高位に位置付けるべきとの考えが示された。
このような中、世界の中でも最速で高齢化が進む我が国においては、団魂の世代が75歳以上となる2025年には、認知症高齢者数は約700万人前後にも達すると推計されており、日本の認知症への取組が注目されている。
認知症は、今や誰でも発症する可能性があり、誰もが介護者となり得るため、認知症施策の推進は極めて重要である。
国は平成27年1月、認知症対策を国家的課題として位置付け、認知症施策推進総合戦略いわゆる新オレンジプランを策定し、認知症の人の意思が尊重され、住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができるよう、認知症の人にやさしい地域づくりを目指すこととし、取組を推進している。
しかし、今後の認知症高齢者の増加等を考えれば、認知症への理解を一層促進するとともに、当事者や家族の生活を支える体制と施設の整備、予防・治療法の確立など、更なる総合的な取組の推進が求められている。さらに、若年性認知症など、これまで十分に取り組まれてこなかった課題にも踏み込んでいく必要がある。
よって、国においては、認知症の人にやさしい地域づくりを推進するため、次の事項について適切な措置を講ずるよう強く要望する。
1 認知症の人の尊厳、意思、プライバシーなどが尊重される社会を目指し、学校教育などを通じ認知症への理解を一層促進すること。また、国や自治体をはじめ企業や地域が力を合わせ、認知症の人やその家族を支える社会を構築するため、認知症に対する総合的な施策について具体的な計画を策定することを定めた法整備に向けた検討を進めること。
2 認知症に見られる不安、抑うつ、妄想などの行動・心理症状(BPSD)の発症・悪化を防ぐため、地域包括ケアシステムの中で訪問型の医療や看護サービスなどの普及促進を図ること。
3 家族介護や独居の認知症の人への介護など、より配慮を要するケースに対するサービスを提供する自治体などの優良事例(高齢者サロン設置、買物弱者への支援など)を広く周知すること。
4 認知症診断直後は、相談できる人がいないなどの事情により、必要な支援や情報を得るに当たっての空白期間が生じている。この空白期間を解消するため、本人が必要とする支援や情報を的確に得ることができるよう、認知症サポーターの活用やガイドブックの作成などによる支援体制の構築を図ること。
5 若年性認知症の支援について、若年性認知症支援コーディネーターの効果的・効率的な活動を促進するため、コーディネーターに対する研修など支援体制を整備するとともに、本人の状態に応じた就労継続や社会参加ができる環境の整備を進めること。
6 全国規模の認知症の疫学調査と疾患登録に基づくビッグデータを活用し、有効な予防法や行動・心理症状に対する適切な対応など認知症施策の推進に取り組むこと。
また、次世代の認知症治療薬の開発、早期実用化や最先端の技術を活用した早期診断法の研究開発を進めるとともに、認知症の人の心身の特性に応じたリハビリや介護方法に関する研究を進めること。
7 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の効果の検証に当たっては、認知症の人本人や介護者の視点を入れた点検・評価を適切に行い、その結果を速やかに施策に反映させること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。