発議案第8号 自殺防止対策の強化を求める意見書
議決日:令和2年10月13日
議決結果:原案可決
意見書提出先:衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、財務大臣、厚生労働大臣、内閣官房長官、復興大臣
自殺防止対策の強化を求める意見書
自殺防止対策の強化を図るための措置を講ずるよう強く要望する。
理由
自殺の原因は、経済・生活問題、健康問題、家庭問題等様々な要因が複雑に関係しているとされており、我が国における自殺による年間死亡者数は平成15年の約3万4千人をピークに減少に転じているものの、依然として2万人を超える高い水準で推移している。
これまで、国は、自殺対策基本法を定め、自殺対策に関する国民の理解の増進や各地方自治体が実施する相談、人材養成、普及啓発等への支援など、総合的な自殺対策を実施してきた。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、国民生活に深刻な影響が生じている中、景気の急速な悪化に伴う生活困窮や、外出自粛などの精神的なストレスによるうつ病の発症等により、自殺リスクの高まりが懸念されており、警察庁によると、全国の本年8月の自殺者は、暫定値で1,854人と前年同月より251人増加している。
また、妊産婦の自殺も深刻となっており、国立成育医療研究センターなどのチームが初めて行った妊産婦死亡についての全国調査によると、2016年までの2年間で、産後1年までに自殺で亡くなった妊産婦は全国で少なくとも102例あったと発表され、妊産婦の死因の第一位が自殺であることが明らかになった。これらには、産後うつをはじめとした精神疾患や育児ストレスなどが強く関連していると言われており、産科施設や行政の連携などによる妊産婦の自殺防止対策は極めて重要である。
加えて、東日本大震災津波等の被災地においては、これまでも辛い経験や生活環境の大きな変化等に伴うストレスによる自殺者の増加が懸念されてきたところであり、被災地におけるこころのケア対策がより一層重要となっている。
こうした状況下において、自殺を防止するためには、経済対策の各施策を迅速かつ着実に実施することはもとより、新型コロナウイルス感染症の影響による国民生活の大きな変化を踏まえ、最前線で寄り添う各種相談体制の強化拡充など、きめ細かな自殺防止対策を早急に実施する必要がある。
よって、国においては、自殺防止対策の強化を図るため、次の措置を講ずるよう強く要望する。
1 新型コロナウイルスに関する支援制度についての周知徹底を図るとともに、自殺防止対策に関する相談機関等の広報啓発を積極的に支援すること。
2 感染リスクにより活動に制約がある状況下にあっても各種相談体制が維持・強化されるよう、人材の確保・養成など、自殺に係る相談環境の整備についての支援を強化すること。
3 自死遺族の声を踏まえ、国や地方自治体、自殺防止対策に取り組む民間団体など、関係機関の連携強化と情報共有を図ること。
4 母子保健における産後うつ等の早期発見、早期介入システムを確立すること。
5 東日本大震災津波の被災地において、こころのケアセンターによる心のケア対策が、必要な期間十分に実施されるよう、財源を確保すること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。