受理番号:48
県立大船渡病院附属住田地域医療センターの診療体制の維持と充実を求める請願
今、私たちは県立大船渡病院附属住田地域診療センターから入院ベッドが消える危機に直面することを余儀なくされている。それは、県医療局が、県立病院等の新しい経営計画(案)を公表したことに起因する。
これまで住田町内にある二つの個人病院は、住田地域診療センターに入院施設があるため、安心して診療できた。また、住田町内の介護老人福祉施設においても、入所者が体調不良になった場合に受け入れていただいたのが住田地域診療センターである。こうしたセンターの支援があったからこそ山間地域においても安心して暮らすことができる地域医療、地域福祉が維持形成されてきたのである。
岩手県初の診療所は、昭和6年6月1日、当時の世田米村に開設された。名称は「岩手県世田米診療所」である。村民の生命と健康を守る医療施設がこの地域には必要だという強い信念が、診療所設置の要望運動を推し進め、診療所施設・設備費の寄附を願い出、診療所が開設されたのである。
診療所開設から77年が経った。県立住田病院から住田地域診療センターと呼び名は変っても、生命の尊厳・尊重を実践していこうとする地域住民の願いが脈々と受け継がれている。
県民の健康・医療を保障することは県の責務である。県民である地域住民の健康を保持し、増進を図ることが、潤いと活力のある地域社会の構築に直結し、県民の幸せとなるのである。
それゆえに、私たちは、住田町において唯一入院施設を有する県立大船渡病院附属住田地域診療センター無床化計画(案)の撤回を求め、現行の診療機能、入院機能が維持、充実されるよう請願するものである。
(理由)
県医療局は、「県下にあまねく良質な医療の均てんを」−より信頼され、愛される病院づくり−を基本理念とする、岩手県立病院等の新しい経営計画(案)を公表した。そこに貫かれているテーマは、より効率的な運用方法である。
私たちは、地域医療を、病気という状態を癒すだけでなく、生命の尊厳を含めた広い意味での健康を地域社会全体で守っていこうとするものと理解している。地域医療は、そこに住む人々の弛まぬ努力と日々の営為が集積し築かれてきたものである。そこにこそ、各人が平等に利益を受けることができる“均てん”の姿がある。新しい経営計画に改めてうたわれるまでもなく、これまでの地域医療の中に、より信頼され、愛される病院づくりが息づいている。
地域に生きる人々の存在を視野に納め、生命の尊厳・尊重が貫かれていない計画は、どんなに美辞麗句がちりばめられていようとも、地域医療の充実を体現する施策とは到底思えない。やせ細っていく病人の前に一人強く丈夫になっていく病院、そんな計画をイメージする。明らかに目的と手段が食い違っているのである。県内の団体から、経営重視、採算最優先という声が聞かれるのもこうしたことを裏打ちしている。
私たちは、これまで築いてきた地域医療、地域福祉を瓦解させかねない住田地域診療センターの無床化に断固反対し、この診療センターの維持と充実について切望するものである。
以上の理由から、次の3項目を請願する。
(請願項目)
1 岩手県立病院等の新しい経営計画(案)において方針とした無床診療所化を撤回すること。
2 常勤医師3名体制による診療体制とし、訪問診療・訪問看護サービスを継続すること。
3 地域住民の生命を守るため、初期救急体制を維持すること。