111 TPPへの参加に関する請願
平成22年12月2日
農林水産委員会
議決日:平成22年12月8日
議決結果:意見書を発議し、関係機関に要望することとして採択
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今、世界の食料事情は解決が待ったなしの状況である。飢餓人口が10億2千万人を超える一方で、異常気象やバイオ燃料の急増等により、食料の需給はますますひっ迫している。
日本でも半数以上の国民が将来の食料供給に不安を感じ、食料自給率の向上を求めている(平成18年12月内閣府「食料の供給に関する特別世論調査」)。命の源である食料には、安全・安心、安定的な供給が必須条件である。ところが日本では、食料自給率を向上させることができないまま、農家、農地がますます減少しており、安全な食料の安定供給が脅かされている。
地域農業と経済の振興は、緊急の課題になっている。ところが政府は、成長戦略の柱としてFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)交渉を位置づけている。さらに菅首相は、臨時国会冒頭の所信表明演説で「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を検討し、アジア太平洋貿易圏の構築を目指す」と表明した。これを受け政府は、TPP参加に向けた検討を行っている。
TPPは、自由貿易協定(FTA)の要素(物品及びサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野(人の移動、投資、政府調達等)も含めた包括的な立場で、原則として関税を始めとしたすべての貿易障壁を協定参加国の間で撤廃する協定である。環太平洋地域全体で実施された場合、農林水産省の試算によると、我が国の食料自給率は40パーセントから13パーセントに急落し、米の生産量は90パーセント減、砂糖、小麦はほぼ壊滅する。さらに試算では、農業生産額が4兆1千億円、多面的機能が3.7兆円喪失し、実質GDPが7.9兆円、雇用が340万人減少するとしている。北海道庁も、北海道経済への影響額は、2兆1,254億円に及び、農家戸数が3万3千戸も減少するという試算を発表した。
岩手県でもTPPへの参加で関税が撤廃された場合、米や牛肉、豚肉などが外国産に置き換わることで、県産農産物の生産額は、6割に相当する1,469億円が減少するとされている(11月15日岩手県発表)。
第1次産業への影響はもとより、経済危機の原因ともなったハゲタカファンドの投資行動や、産業構造への影響、産業構造変化にも起因する雇用への影響、移民労働問題等、労働者にも直接的で広範な影響が生ずることが懸念される。
このように、国民の圧倒的多数が願っている食料自給率の向上、安心して暮らせる社会づくりと、TPP交渉への参加は両立するものではない。
今求められることは、食料をさらに外国に依存する政策と決別し、世界の深刻な食糧需給に正面から向き合い、40パーセント程度に過ぎない食料自給率を向上させる方向に大きく踏み出すことである。食料自給率の向上に向けた具体策を政府が持ち、国民が自分たちの食料・農業政策を決定する権利である食料主権に基づいた貿易ルールを確立することが求められている。
以上の趣旨に基づき、次の事項について請願する。
(請願事項)
下記の事項を実現するために政府及び関係機関に意見書を提出すること。
国民の食料と農業・地域経済を犠牲にする環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉には参加しないこと。