118 養護老人ホームの運営や施設整備に関する支援の拡充を求める請願
平成23年7月1日
環境福祉委員会
議決日:平成23年7月13日
議決結果:意見書を発議し、関係機関に要望することとして採択
養護老人ホームは、明治時代、貧困により生活に困窮した高齢者の受け入れ施設であった養老院が始まりとされており、それ以降、救護法(昭和4年)、生活保護法(昭和25年)、老人福祉法(昭和38年)と一貫して、国の責任の下で低所得高齢者の福祉対策、つまり弱者救済の措置施設として運営が図られてきているものであり、現在、老人福祉法上唯一の措置施設である。
措置とは、措置権者がその公的責任において調査、判定の上、サービスの提供内容、費用負担等を決定し、社会福祉サービスを利用者に給付する行政行為であり、その基盤は、法令による位置付けとそれを支える財源により構築されるものである。
しかし、平成17年に措置(運営)費及び施設整備費に係る財源が地方に移譲されて以来、施設の近代化が大きく遅れるとともに、措置(運営)費の一般財源化により、市町村の負担が大きくなったことから、入所の必要が高いと思われる者に対する措置が控えられるなど、全国的に制度が円滑に運営されていない状況も見られるところである。
また、現在、岩手県における施設数は17施設であるが、施設が著しく老朽化し、居住形態のほとんどが多床室(4名〜2名の相部屋)となっている。その一方、施設整備に対する補助制度の変遷に伴い、実質的に補助率が低下するとともに、措置費において減価償却費が算定されていないこと、養護老人ホームでは入所者から居住費を徴収することができないこと等から、制度上、施設整備に必要な財源の確保が十分できない状況である。独立行政法人福祉医療機構の融資制度は改善されてきたが、介護報酬等により財源確保が可能な介護保険施設と概ね同等の融資条件が設定されている中で、十分な資金調達ができず、未だに施設の改築等が進まない実態があり、多くの入所者が劣悪な環境下での生活を余儀なくされている状況である。
養護老人ホームは、低所得高齢者や精神障がいを有する高齢者のほか、薬物依存等、社会的不適合な高齢者の受け入れ施設として、老人福祉施策上、今後も極めて重要な役割を担う施設である。
ついては、以上のことを踏まえ、養護老人ホームの運営や施設整備に対する支援の拡充等について、以下のとおり請願するので、国に対して意見書を送付願いたい。
(請願事項)
1 入所者等のニーズに対応可能な制度となるよう、国の責任において、措置の適正化や措置費の見直し等の改善を図ること。
2 老朽化している施設の改築等を適時適切に行うことができるよう、次の措置を講じること。
(1) 改築等に係る法人負担を軽減するため、現行の都道府県の一般財源による支援措置だけでなく、国において新たな補助制度を創設するなど、直接支援措置を講じること。
(2) 改築等に係る借入金の償還財源を確保するため、措置費において制限されている償還金への充当に係る規制の緩和を図ること。