5 環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加に反対する請願
平成23年10月17日
農林水産委員会
議決日:平成23年10月21日
議決結果:意見書を発議し、関係機関に要望することとして採択
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東日本大震災は本県沿岸部を中心に5千名を超える尊い人命を奪い、多くの被災者が働く場を失うなど、かつて経験したことのない甚大な被害をもたらしている。また、震災に伴って発生した福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の影響で、私たちの生活への影響と健康への不安が重大な問題となっている。生活と地域の産業が、これほどまで厳しい状況にさらされたことはない。こうした震災の影響を受け、6月には交渉参加の判断をすることとしていた環太平洋連携協定(TPP)についても、政府は判断を先送りしてきた。
ところが野田首相は日本のTPP交渉への参加について、早い時期に結論を出すとの発言を繰り返しており、一部経済界や大手マスコミからも、大震災からの早期復興のためにもTPP参加が必要などと、TPP早期参加を求める声が強まっている。
しかしTPPは、自由貿易協定の要素(物品及びサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野(人の移動、投資、政府調達等)も含め、原則として関税を始めとしたすべての貿易障壁を、協定参加国の間で撤廃する協定である。環太平洋地域全体で実施された場合、農林水産省の試算によると、我が国の食料自給率は40パーセントから13パーセントに急落し、米の生産量は90パーセント減、砂糖、小麦はほぼ壊滅する。さらに試算では、農業生産額が4兆1千億円、多面的機能が3.7兆円喪失し、実質GDPが7.9兆円、雇用が340万人減少するとしている。北海道庁も、北海道経済への影響額は、2兆1,254億円に及び、農家戸数が3万3千戸も減少するという試算を発表した。
岩手県でもTPPへの参加で関税が撤廃された場合、米や牛肉、豚肉などが外国産に置き換わることで、県産農産物の生産額は、6割に相当する1,469億円が減少するとされている(2010年11月15日岩手県発表)。
この間に、県内のさまざまな団体で構成する「TPP等と食料・農林水産業・地域経済を考える岩手県民会議」が結成され、TPP交渉参加反対の運動が取り組まれてきた。建設から医療福祉まで幅広い分野から反対の声が上がっている。県民会議への参加団体は49団体となり、個人署名は15万人を超える県民から寄せられている。
例外なき関税撤廃を原則とするTPPは、震災による甚大な被害や環境変化に全く対応したものではない。TPP参加の検討自体を直ちに中止し、震災からの復興と原発事故の収束に国民一丸となって取り組むべき時である。
以上の趣旨に基づき、次の事項について請願する。
(請願事項)
下記の事項を実現するために政府及び関係機関に意見書を提出すること。
記
国民生活と第一次産業・地域経済を犠牲にし東日本大震災からの復興に逆行する環太平洋連携協定(TPP)交渉には参加しないこと。