35 「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」の延長及び日本司法支援センター出張所の存続に関し国への意見書提出を求める請願
平成29年3月6日
総務委員会
議決日:平成29年3月22日
議決結果:意見書を発議し、関係機関に要望することとして採択
送付
(要旨)
貴議会において、衆参両議院及び政府に対し、以下の事項を内容とする意見書を提出するよう請願する。
1 「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」(平成24年3月29日法律第6号)(以下、「被災者援助特例法」という。)を平成30年4月1日以降も延長すること。
2 日本司法支援センター岩手地方事務所大槌出張所(以下、「法テラス大槌」という。)及び同気仙出張所(以下、「法テラス気仙」という。)を平成30年4月1日以降も存続させること。
(理由)
被災者援助特例法が平成24年4月1日に施行されて以降、岩手県内を始めとする多数の被災者に対し、同法に基づき、無料の法律相談等の法的支援がなされてきた。この制度は、資力に関わらず、無料法律相談を受けられるため、利用者の心理的なハードルが軽減するのみならず、行政機関などが弁護士相談を紹介することが容易になり、法律相談への心理的なアクセス障害が緩和され、その結果、紛争が深刻になる前に相談し、早期に対応することで紛争の未然防止や早期解決につながっている。
また、平成24年3月10日に法テラス大槌が、平成25年3月24日に法テラス気仙がそれぞれ開設され、弁護士の数が少ないにもかかわらず、被害が甚大であった岩手県沿岸南部において、被災者が弁護士、司法書士等専門家にアクセスすることができる拠点として重要な役割を果たしてきた。
ところが、被災者援助特例法は平成30年3月31日限りで失効し、これとともに法テラス大槌及び法テラス気仙も廃止するものとされている。
しかしながら、平成29年3月で東日本大震災の発生から6年が経過するが、復興はいまだ道半ばであり、平成28年12月28日時点でいまだ14,521人の被災者が応急仮設住宅等での避難生活を余儀なくされている。加えて、県外での避難生活を過ごしている被災者もいる。
災害公営住宅の建設や土地区画整理事業の完了予定が平成30年度の地区も多々あることや、住宅金融支援機構による住宅ローンの支払猶予が終了したことなどにより、平成30年以後も、震災に起因した法的問題が生じ、法律相談の需要が継続的に高まることが予想される。
また、災害公営住宅に入居したり、住宅等の再建のための土地の引渡しを受けたとしても、生活の再生までには、様々な法的情報の提供を受ける必要がある。あるいは、生活再建の中で、土地・住宅関連紛争、近隣紛争、家族関連紛争、消費者被害、多重債務問題など、震災に起因した法律問題が既に発生し始めており、更に今後も増加することが予想されることから、被災地における法律相談を行うニーズは高い。このことは、震災法律相談等の件数から見ても明らかである。
加えて、東日本大震災における原子力発電所の事故による損害賠償請求権の消滅時効が10年に延長されたが、被災者援助特例法が失効すれば、それ以後の時効完成までの期間、法的支援がなされないこととなってしまう。
したがって、今後も、被災者の生活再建に向けた法律相談援助等を継続する必要性は高く、被災者援助特例法はなおも復旧・復興の重要な役割を担っているものである。
また、もし法テラス大槌及び法テラス気仙が、被災者援助特例法の失効に伴って閉鎖されることになれば、当該地域の弁護士だけでは、現時点で既に被災者からの相談受任案件が極めて多く、また利益相反となる場合もあるため、被災者の今後の法的ニーズに対応することは極めて困難である。また、沿岸被災地における高齢化は著しく、かつ、交通の便もよくないことから、被災者が内陸部に赴いて弁護士に相談することは困難であり、当該地域における弁護士の事務所での相談や出張相談も限定的にしか行い得ない。
他方で、被害が甚大な岩手県沿岸南部の被災市町村において、上記の法的ニーズに対応するための相談拠点を独自に設けることは困難である。
したがって、上記のような沿岸被災地における法的ニーズを満たすためには、法テラス大槌及び法テラス気仙を存続させることが必須である。
以上より、貴議会において、地方自治法第99号の規定により衆参両議院及び政府に対し、意見書を提出するよう請願する。