80 岩手県全域におけるひきこもり対策の充実を求めるための請願
平成30年12月4日
環境福祉委員会
議決日:平成30年12月13日
議決結果:採択
送付
(請願趣旨)
・社会問題としてのひきこもり
ひきこもりという現象は、社会的な孤立から生きづらさを抱える本人のみならず、家族や周囲にも苦悩をもたらし、背景が多様で複雑であるために支援が困難であるという深刻な社会問題である。また、長期にわたるひきこもりは、今や「8050問題」という言葉に象徴される高齢化の課題にも直面している。
・ひきこもり支援の実情
県内におけるひきこもり支援の概況を見ると、平成21年度の厚生労働省によるひきこもり対策推進事業を受けて、同年8月に「岩手県ひきこもり支援センター(ひきこもり地域支援センター)」が設置された。また、平成22年4月に施行された子ども・若者育成支援推進法において、「ひきこもり地域支援センター」は、子ども・若者育成支援ネットワークを構成する機関とされている。さらに平成27年度に制定された生活困窮者自立支援法のもとでは、ひきこもりも関連事業の対象となった。
一方、県内の医療機関においては、現在、複数のクリニックがひきこもり専門の家族教室や個別相談を実施している。合わせて、民間においても有志の法人や個人による訪問支援及び居場所の運営、支援者セミナー、家族相談会、親の会の結成など自発的な相談支援活動が実践されており、その中には、活動期間が20年余に及ぶものもある。
上記のとおり、本県内において、ひきこもり支援に関わる個々の社会資源は、既にある程度存在している。しかし、連携、財源、人材がまだまだ足りず、ひきこもりという現象を入り口から出口までワンストップで包括的に支援するネットワークは、いまだ構成できていないのが実情である。
・親の願い
本県では、今年度、ひきこもりに関する県の実態調査が実施されている。この機に、公的支援と民間支援が一丸となって、県における包括的なひきこもり支援の体制が実現されることを希望し、私たちは、本年4月、親及び支援者の有志で「岩手ひきこもり支援連絡会」を結成した。会では、ひきこもりへのあるべき支援の形について議論を重ねるとともに、県内各地の被支援家族52名に御協力をお願いし、「ひきこもり支援に関する家族の要望アンケート」を実施した。その結果、「専門に相談支援にのってくれる機関(病院も含む)が身近に欲しい」、「本人を社会や仕事にどのようにつなげることができるのかわからないので手伝ってほしい」、「親も高齢になり、これから先のことが不安である」(アンケート回答者の61%が60代以上)等の声が多くあがった。
・ひきこもり対策の充実に向けて
効果的なひきこもり対策には、多様な個々のニーズを適切な社会資源へとつないでいく支援の連携が不可欠である。県全域において濃淡のない支援を展開するためには、中核的な機関と県内各地域に配置された専任スタッフが連携しながら当事者に一貫して寄り添い、丁寧なマネジメントのもと、関連する地域の医療保健・心理・福祉・教育・労働等各領域の支援者が協働する体制が求められる。そしてまた、厚生労働省によるひきこもり対策推進事業で推奨されている「ひきこもりサポーター」(地域におけるひきこもりの早期発見、訪問支援、専門機関への紹介)の養成及び派遣も希求されている。
こうした支援体制づくり、連携、人材育成等を有効にすすめるためには、ひきこもり対策を検討する県の「連絡協議会」の設置が必須である。
多様で複合的な課題を有するひきこもりに対応する支援は、地域の力を柔軟かつ臨機応変に活用していかなくてはならない。岩手県次期総合計画(素案)「長期ビジョン」には「『他人とのかかわり』や『つながり』を大切にする岩手ならではの社会観は、岩手の風土の中で養われた強み」とある。こうした本県ならではの「強み」を生かしたひきこもり支援の充実強化を切に望む。
以上の観点から、県において、次の事項について実現されるよう請願する。
(請願事項)
1 県レベルでのひきこもり施策を検討する各領域の支援者の協働による「連絡協議会」を設置すること。
2 県における中核的なひきこもり支援機関である「岩手県ひきこもり支援センター」を整備充実すること。
3 県内各地域にひきこもりの相談支援を担当する専任スタッフを配置すること。
4 ひきこもりに関するさまざまな事業(居場所の設置、訪問支援の実施、家族 の集まる場の設置等)が県内各地域において実施できる体制を構築すること。
5 「ひきこもりサポーター」の養成及び派遣事業を実施すること。