90 平成31年度岩手地域最低賃金改正等についての請願
平成31年3月14日
商工文教委員会
議決日:平成31年3月25日
議決結果:意見書を発議し、関係機関に要望することとして採択
送付
平成31年度の岩手県最低賃金の改正に関して、岩手労働局、岩手地方最低賃金審議会及び政府に対して意見書を提出するよう請願する。
(請願趣旨)
労働基準法第2条(労働条件の決定)は、労働条件は、労働者と使用者が、対等な立場において決定すべきものであると定めている。しかし、地域別最低賃金の影響を受ける多くの非正規労働者やパートタイム労働者は、労働条件決定にほとんど関与することができない。
こうした中、地域別最低賃金は、生活保護に係る施策との整合性に配慮することが盛り込まれた最低賃金法改正(2008年7月施行)以降、できる限り早期に全国平均最低800円を確保、全国平均1,000円を目指すという目標を掲げた雇用戦略対話合意、経済財政運営と改革の基本方針及び日本再興戦略、さらにはニッポンー億総活躍プランの影響も受け、従前に比べ大幅な引上げが続いている。岩手県の地域別最低賃金については、ここ10年間で131円引き上げられた。審議会では金額審議において引上げ額の議論はされてはいるが、あるべき水準への引上げができていない現状にある。
昨年の2018春季生活闘争において、賃金の底上げ、底支え、格差是正の実現を通じて、経済の自律的成長、包摂的な社会の構築、ディーセント・ワークの実現を目指し、総合生活改善闘争として、すべての働く者がいま直面している課題の解決を図り、賃金の底上げ、底支えと格差是正の実現が不可欠であり、月例賃金の改善にこだわる取組を継続するとともに、あらゆる手段を用いて産業の底上げ、底支え、格差是正に寄与する取組を展開してきた。とりわけ中小企業で働く仲間や非正規労働者の処遇改善に向け、より主体的な闘争を進め、大手追従、大手準拠などの構造を転換する運動に挑戦してきた。
その結果、回答・妥結状況では世界的な政治、経済の不透明感による先行き懸念などを理由に、経営者側が賃上げに対し慎重かつ厳しい態度で臨んできたが、組合側が粘り強い交渉を進めた結果として、十分な底上げは獲得できなかったものの、底支えにはつながったと判断する。加えて、一時金への反映や労働条件、処遇の改善を勝ち取るなどの特徴点はあったものと推察される。
しかし、企業内最低賃金の引上げや、地域別最低賃金の引上げを図らなければ、賃金格差が広がり、県内勤労者の人材確保がさらに厳しくなる。
賃金のナショナルミニマムを担う現在の地域別最低賃金762円は、岩手県の高卒初任給146,400円を所定内実労働時間167時間(高卒初任給及び所定内実労働時間は平成29年賃金構造基本統計調査による)で時間換算した877円と比較して、差額が115円となり、一般的な賃金の実態を十分に反映できておらず、県内勤労者の有効なセーフティーネットとして十分に機能しているとは言えない。地域別最低賃金を有効に機能させるためには、大幅な水準の引上げが、極めて重要な課題となっている。
さらには、被災地の雇用におけるミスマッチの解消や安定した経営、雇用が図られるには、岩手県の地域別最低賃金の引上げに合わせ、中小企業への支援の充実が、対応策の一つであると考える。
以上の観点から、次の請願事項を岩手労働局、岩手地方最低賃金審議会及び政府に意見書を提出するよう請願する。
(請願事項)
1 岩手労働局及び岩手地方最低賃金審議会への要請事項
(1) 平成31年度の岩手県最低賃金の改正に当たっては、雇用戦略対話合意に基づき早期に800円を確保し、景気状況に配慮しつつ全国平均1,000円に到達することができる審議会運営を図るとともに、各種経済諸指標との整合性を図り、中央水準との格差是正などを踏まえた上積みの改正を図ること。
(2) 県内で最低賃金以下の労働者をなくすために、事業所に対する指導監督を強化し、最低賃金制度の履行確保を図ること。
2 政府への要請事項
最低賃金引上げと同時に、中小企業に対する支援の充実と周知を図り、安定した経営を可能とする対策を行うこと。