57 障害者自立支援法審議について請願
平成17年6月27日
環境福祉委員会
議決日:平成17年7月4日
議決結果:意見書を発議し、関係機関に要望することとして採択
送付
今国会で審議されている障害者自立支援法において、当初目的であった障害者が地域で生活する権利や差別禁止事項の明記を要望するとともに、障害者の自立を阻害し、本人や家族に負担を強いる内容を見直し、障害者の地域生活確立のために役立つ法となるよう国に働きかけていただきたい。
私たち障害当事者は、今国会で審議されている障害者自立支援法に多大なる関心を寄せている。この法案には、私たちがこれまでねばり強い取り組みの中で拡充を獲得してきた地域での自立生活を後退させると言わざるを得ない内容が、盛り込まれているからである。私たちは、この障害者自立支援法案の一番の当事者である障害者の懸念の声に真に耳を傾け、地域生活の実態を踏まえた上で、国会で丁寧な審議をし、同法案に修正を加えていただくことを強く要望する。
ついては、県議会として、地方自治法第99条の規定により意見書を提出されるよう請願する。
なお、障害者自立支援法案に関する懸念事項は、次のとおりである。
1 義務的経費としての個別給付
当法案では、個別給付は義務的経費化された。厚生労働省は、障害程度区分ごとに設定される標準的な費用額に利用者数をかけて計算される金額を上限とし、当該上限額を超えた部分は市町村の負担になると説明している。これは、長時間介護が必要な重度障害者にとっては、死活問題である。現在でも、入院中や通学中での支援費利用は、国庫補助がつかないため、すべて市町村の負担となり、数箇所の市町村を除く多くの市町村で、この部分の支援費利用が認められていない。
2 移動支援事業の頓挫
重度訪問介護、行動援護以外は、地域生活支援事業での移動介護(ガイドヘルプ)になるが、地域生活支援事業は裁量的経費なので、予算を超える利用があっても国・都道府県の補助はない。
今回の変革では、身体介護つきの移動介護がなくなり、行動援護か移動介護のみになってしまう。行動援護については、危険回避ができない行動障害を持つ知的・精神障害者のみが対象とされており、移動介護を現在利用している知的障害者のうち、対象となるのはわずか1割程度とみられている。それ以外のほとんどの移動介護は、地域生活支援事業の中に移ることになる。
移動介護は、障害者の地域での自立・社会生活を支える不可欠のサービスであり、個別給付から外れることは極めて大きな問題である。
3 扶養義務を助長させる矛盾
福祉サービスの利用については、生計を一にする家族の負担を勘案しとしている。つまり、世帯の収入を合算して自己負担額を決めることになり、家族と同居している障害者は、サービスを家族の顔色をうかがいながら使うことになってしまう。
4 生活貧困者にさらなる打撃:利用料負担
現在支給決定を受けている障害者は、18%が生活保護世帯、77%は収入が年金だけの世帯で、所得があって利用料を払える人は5%しかいない。月に8万円から11万円程度の年金や手当てだけで生活しているので、法案の指定に従って毎月2万5千円を払ったら生活していけない、払わなければサービスが受けられないという、明らかな矛盾が起きる。
所得保障のための施策を実施せずに負担のみを規定する改革を実施するならば、障害者の生活を圧迫するための法案であるといわざるを得ない。
12月の社会保険審議会障害者部会では、生活保護への流入を避けるため、減免措置を講じるということが示されているが、減免措置はこの問題に対する根本的な問題解決にはならない。