16 岩手県における産後ケア事業の更なる充実・強化を求める請願
令和5年12月4日
環境福祉委員会
議決日:令和5年12月12日
議決結果:採択
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(請願趣旨)
産後ケア事業は、少子化が進む現代において、心身共に健康な状態で育児が行えるように母子を包括的に支援する極めて重要な事業である。
岩手県では、分娩可能な施設が限られており、現在では33市町村中9市町村のみとなっている。加速度的に分娩集約化が進んだ分娩施設では、安全に分娩を終了できるよう医師、助産師らが昼夜問わず懸命に業務にあたっている一方、多忙な病棟業務の中では、分娩後の正常な赤ちゃんが泣きやまないなどという母によるナースコールへの対応は、優先度が低くなっていると言わざるを得ない。年々、分娩後の入院日数は短期間になっており、十分に育児技術を習得しないまま退院を迎える方も多く、不安を抱えたまま遠方の自宅や里帰り先に帰り、育児を開始する。近年は、祖父母世代も働いていたりすることで、里帰りしたからといって十分な産後の支援を受けられる状況にない母子も少なくない。
平成29年度に厚生労働省において産前・産後サポート事業ガイドライン及び産後ケア事業ガイドラインが制定され、岩手県内でも事業を実施する市町村が増加してきたが、市町村ごとに事業内容に格差が生じているのが現状である。出生数の少ない市町村では、産後ケア事業を十分な内容で実施できていない市町村もあり、産婦が産後ケアを受けたくても受けられない産後ケア格差が生まれている。
令和4年1月には、総務省により産前・産後の支援の取組状況についての行政評価・監視が行われ、医療機関や助産師などの偏在等により、その実施状況や内容について地域間で格差があることや、事業実施に際して、都道府県からの市町村への支援の必要性も指摘されている。また、厚生労働省の委託による令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業の産後ケア事業及び産婦健康検査事業等の実施に関する調査研究で実施されたアンケート調査結果では、アンケート回答市町村のうち、宿泊型は67.5%、デイサービス型は68.3%、アウトリーチ型は55.5%で実施されており、全国的には、宿泊型、デイサービス型、アウトリーチ型がそれぞれ整備され、妊産婦のニーズに合わせた産後ケア事業となっていることもうかがえる。加えて、令和5年度の国の母子保健医療対策総合支援事業実施要綱の改正では、対象は産後に心身の不調又は育児不安等がある者、その他特に支援が必要と認められる者から産後ケアを必要とする者に改められ、拡充されている。
複数の市町村から委託を受け、産後ケア事業に携わっている団体として、いわゆる特定妊婦の利用も増え、産後の疲労、精神疾患を抱える方、家族の協力を得られない方など、日々途切れることのない産後の女性たちの悩みに耳を傾けていると、産後ケアの更なる充実と強化が急務だと考える。
産後ケアには、休養、育児技術の習得、育児についての相談、母親同士の交流等、様々な目的があるが、分娩施設が少ない岩手県において、地域間格差なく、退院直後から継続し、安心して育児が行えるよう、産後ケア事業の更なる充実、強化を図るよう請願する。
(請願事項)
1 県の積極的な関与により広域連携を進め、里帰りを含め居住市町村以外の産婦の産後ケア利用促進を図ること。
2 速やかに宿泊型産後ケアの整備を進めること。
3 産後ケア事業の利用希望者が移動手段を確保できない場合、その利用希望者へのタクシー代の補助を検討すること。