87 灯油の「適正価格と安定供給」「行政の施策強化」を求める請願
平成18年12月5日
環境福祉委員会
議決日:平成18年12月11日
議決結果:意見書を発議し、関係機関に要望することとして採択
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私たち岩手県民にとって、暖房用の灯油は生活必需品(電気・水に等しいもの)であり、適正価格で安定的に供給されることは共通の願いである。
昨年は、こうした願いとは裏腹に、4グループ化した石油元売会社は、原油価格の高騰と12月以降の記録的な寒波・豪雪を口実に、生産カルテル(減産・輸出・在庫削減)や系列企業への出荷を抑えながら高騰する業転企業に流して儲け、さらにそれを買い戻し、高騰した灯油を系列企業に押し付けるなど、灯油価格の吊り上げをはかり、消費者の家計を圧迫し、地域経済に大きな影響をもたらした。
さらに、ガソリン、灯油、軽油、重油などの石油製品価格が上昇し、さんま、鮭などの水産や野菜などの農産物生産など、農漁民への影響は莫大であった。また、食品加工・包装資材の製造・販売や、トラック、バスなど運送業への影響は深刻である。
このように、農林漁業者や中小企業が、原油高によるコスト増を製品に転嫁できずに苦労しているとき、石油元売各社が高収入を上げ続け、原油高騰を転嫁する企業姿勢はいかがなものかと思う。
今年の灯油価格は3年連続で高騰して、岩手県民生活センター発表の11月の灯油配達価格は、18リットル1缶1,470円(1リットル81.6円)になっている。この価格は昨2005年同時期と比較し186円(2004年同時期と比較し439円)の高騰となり、1世帯約1,084リットルの使用(いわて生協灯油利用組合員調査)では11,165円(2004年比では26,459円)の支出増となり、今でさえ厳しい暮らしへの影響が一層深刻になってきている。
私たちの暮らしと地域経済が大変な状況にあるにもかかわらず、市場競争原理主義、規制緩和・構造改革、官から民への社会風潮の中で、不介入とする行政の責任や役割は見直し、国民の立場に立った行政施策の強化が必要ではないか。
原油価格に加えて、石油元売各社の収益最大化のための不明瞭なコスト要因を一方的に価格転嫁することに私たちは反対する。
生活必需品である灯油は、需要期に入った。政府は、国民の立場に立った誰でも納得する灯油の適正価格と安定供給を実現する責任がある。
ついては、以下のことを踏まえた灯油の「適正価格と安定供給」「行政の施策強化」の実現について、国に対し地方自治法第99条による意見書を提出するよう請願する。
1 生活必需品である灯油の需要期、急速に進む低在庫と異常寒波を利用し、昨冬のような便乗値上げが行われないよう、調査、監視、指導を行い、それを公表し、適正価格と安定供給に万全の対策で臨むこと。
(1) 政府は、石油関連行政の規制緩和を進め、行政不介入としながらも、毎年石油産業に膨大な税金をつぎ込んでおり、国民の立場に立っただれもが納得する適切な灯油の価格と安定供給を実現する責任がある。
(2) 昨年の灯油独歩高は、石油元売会社が高位の海外市場への製品輸出を行い、系列への供給責任を後退させ、業転市場の高値形成を図り、そこへの販売で利益を上げ、また、これらの市中買いを系列に値上げ販売したことが要因とされた。今年も在庫削減を進めており、寒波を利用しての昨冬のような商法が心配される。
(3) 灯油は、季節・気候によって需要が大きく変動する商品であり、異常寒波など不測の事態も想定される。余裕のある需給計画をつくり、不測の事態の場合でも、敏速かつ万全な体制で対応し、暮らし・地域経済への影響を最小限にとどめることが不可欠である。
2 国民に対し機敏に情報を提供すること。
(1) 東北各地の拠点ごとの在庫を定期的に把握し、消費者に対し機敏にわかりやすい情報の提供をすること。
(2) 価格の動向について、小売価格と同様に卸売価格についても毎週調査を行い、わかりやすい形で公表すること。
3 国民の立場に立った石油行政施策を強化すること。
規制緩和、市場競争万能主義のもとで、政府は、1996年3月、特定石油輸入暫定措置法を廃止し、1997年6月には、石油流通における行政不介入を旨とする報告書をまとめた。こうした規制緩和の進行により、私たちの暮らしはますます厳しくなり、灯油価格の高騰がさらに家計を圧迫している。
こうした規制緩和の弊害と、行政の責任や役割がどうあればいいのかを見直し、国民の立場に立った施策が必要ではないか。