インバウンドの地方分散に向けた措置を講ずるよう強く要望する。
理由
コロナ禍で激減した訪日外国人旅行者数は、2023年に2,507万人とコロナ禍前の2019年の約8割、消費額も5兆円に回復した。外国人延べ宿泊者数も 1.18億人泊と、コロナ禍前の水準まで回復したが、宿泊先は三大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県の8都府県)で71.5を占め、 2019年の62.7から偏在が進んでいる。
また、2024年1月から3月までの訪日外国人旅行者数についても856万人と第1四半期で過去最高、消費額も1.8兆円と四半期として過去最高となった一方で、インバウンドが回復したことにより、一部の観光地ではオーバーツーリズムが起こるなど、インバウンドの訪問先は特定の地域に集中している。
岩手県においては、2023年1月に盛岡市がニューヨークタイムズ紙の2023年に行くべき52カ所に選出され、国内外の認知度が高まり、2023年の盛岡市の外国人観光客入込数は約6万人で、前年の約10倍となった。また、東日本大震災津波からの復興を目的に環境省が策定したグリーン復興プロジェクトの一環として、2019年6月9日に全線開通したみちのく潮風トレイルは、本年2月英紙タイムズに日本で訪れるべき場所14選と題した記事が掲載され、外国人ハイカーが増加している。
よって、国においては、これら注目を浴びていることを好機と捉え、特定の地域に集中しているインバウンドの効果を全国隅々まで行き渡るように、次の措置を講ずるよう強く要望する。
1 地方部へのアクセスを向上させるため、道路などの交通インフラを整備するほか、地域公共交通の利便性の向上、観光関連サービスなどとの連携により、主要観光ルートとの接続を改善すること。特に中核都市からの二次交通を充実するための支援、インバウンド向けのシャトルバスや観光専用ルートを開発するための補助金や助成金の拡充を図ること。
2 みちのく潮風トレイルや三陸ジオパークなどの地域の自然や文化を 生かした観光資源の持続可能な開発を支援し、地方の魅力発信を行うとともに、多言語対応で地域の観光資源やガイドを一元的に提供するインバウンド向けのポータルサイトの整備や、海外から直接地方の宿泊施設やアクティビティ等を予約できるようなシステム構築の支援を行うこと。
3 公益社団法人日本観光振興協会は、2023年から全国の観光地の来訪者数を集計したデジタル観光統計オープンデータの提供を始めたが、コロナ禍から活発になった観光におけるデータ活用の流れを本格的なものにするためにDMOへの支援をはじめとして、地方の事業者が使いやすいビックデータの環境整備を進めること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。