生殖補助医療を利用しやすくするため、利用環境の整備を推進するよう強く要望する。
理由
国内の出生数は減少を続けており、近年その傾向が顕著になっているが、一方で生殖補助医療による出生数は増加を続けており、全体の1割に迫る勢いとなっている。
我が国では、不妊の検査・治療の経験がある夫婦は約4.4組に1組といわれ、2回以上の流死産の既往がある不育症の患者は、約30万から約50万人いると推定されており、不妊症・不育症は、出産を希望する人にとって特別なことではなく、安心して治療を受けられる社会づくりが求められている。
生殖補助医療は、国及び都道府県の助成金事業の対象であったところ、令和4年4月から保険適用となり、保険適用の範囲においては、利用者の負担軽減につながっている。
しかし、不妊治療では人工授精等の一般不妊治療、体外受精・顕微授精等の生殖補助医療について、不育症治療ではヘパリン製剤の自己注射等について、保険適用が認められているものの、一部の検査や治療は自費診療となっており経済的負担が大きくなっている。また、漢方薬など代替医療への継続的な出費等が大きな負担になる事例も指摘されている。さらに、一部の投薬治療など保険適用外の診療と併用することになれば混合診療となり、これまでの助成制度よりも自己負担額が増加する場合もあることから、保険適用範囲の拡大など抜本的な改善を図る必要がある。
加えて、不妊治療・不育症治療は、精神面の負担や通院回数の多さなどにより、仕事との両立が困難となり、治療の断念や退職を選択する人々もいることから、働きながら治療を受けるためには職場を含めた周囲の理解や協力が必要不可欠である。
しかし、厚生労働省が令和5年度に行った不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査によると、アンケートに回答があった半数以上の企業が不妊治療を行っている従業員の把握ができておらず、また、不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度等がある企業は3割未満である結果などから、仕事と不妊治療を両立できる周囲の理解や支援は十分とはいえない。
よって、国においては、生殖補助医療を利用しやすくするため、次の措置を講ずるよう強く要望する。
1 生殖補助医療の保険適用範囲について、効果が明らかな治療に対する医療保険の適用のあり方を含め、不妊治療の経済的負担の軽減を図る方策を取ること。また、医師が必要と判断した治療及び検査に対して、回数にとらわれず保険適用の対象とするなど、制度の更なる充実を検討すること。
2 仕事と不妊治療の両立ができるよう、社会的理解を促進するための啓発の更なる充実を図ること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。