地域住民の生活環境を著しく脅かす特定空家等対策の推進を図るため、制度の見直しと財政支援の拡充を行うよう強く要望する。
理由
人口減少社会の進展等を背景に全国的な空き家や空き地の増加が社会問題となって久しい中、令和5年に実施された国の住宅・土地統計調査では、全国の空き家総数が900万2千戸に達した。そのうち賃貸・売却用及び二次的住宅を除く長期にわたって人が居住していない空き家は385万6千戸で、平成30年と比べ36万9千戸の増加となり、日本の総住宅数6,504万7千戸の5.9%を占めている。
適切な管理が行われていない空家等が、防災、衛生及び景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることから、国において平成27年5月に空家等対策の推進に関する特別措置法を施行し、市町村では特定空家等について、除却、修繕及び立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告及び命令に加え、行政代執行による強制執行が可能となった。また、平成29年5月からは法定相続情報証明制度の運用が開始され、相続手続に係る相続人と手続の担当部署双方の負担軽減が図られるとともに、相続登記に係る住民の意識向上も図られている。
しかしながら、所有法人の解散による所有者不在や相続人が多数存在する等により適正な管理がなされずに放置されている空き家は増加の一途をたどっている。また、行政代執行による特定空家等の除却は膨大な事務量となっているほか、相続放棄や所有者の確知ができないことから除却費用の回収も難しく、市町村財政にも多大な影響を及ぼしている。
よって、国においては、地域住民の生活環境を著しく脅かす特定空家等対策の推進を図るため、次の措置を講ずるよう強く要望する。
1 所有者不在又は多数の相続人がいる等、所有者の確知に膨大な事務を要する場合における特定空家等の除却に係る権利関係の調査範囲を簡素化し、納税義務履行者等に絞る等、制度の見直しを図ること。
2 代執行後の費用回収が難しい特定空家等の除却を行った市町村に対する財政的支援を拡充すること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。