これからの日本を背負う子どもたちの健やかな成長のため、デジタル教科書の導入を急ぐことなく、デジタル化が及ぼす影響について研究を重ね、教育現場を含め広く国民の理解を得た上で導入の是非を判断するよう強く要望する。
理由
デジタル化社会の進展によって教育分野におけるデジタル化も年々進み、学習方法の多様化や、効率化の向上が図られている。その一方で、教育のデジタル化が子どもや教育現場に与える負の側面も指摘されており、教育現場からはデジタル化の進行が今後の教育に与える影響を危惧する声が上がっている。
そのような中、国は教科書のデジタル化を進めるため、文部科学省中央教育審議会作業部会において議論を進めてきたところであり、先般、部会によるデジタル教科書の活用に関する審議がまとまり、デジタルを正式な教科書とする審議まとめが了承されたところである。
審議まとめによれば、教科書は、紙、デジタル、両者を組み合わせたハイブリッドの中から、各自治体の教育委員会が学年や教科ごとに選ぶ形が想定されており、次期学習指導要領の実施に合わせて使用できるようにすることが望ましいとされたところである。
しかしながら、デジタル教科書については、教育現場から、視力の低下等の健康面への影響や、大規模通信障害時のリスク、流し読みが増えることでの集中力の低下、児童・生徒の「書く」時間の減少による読解力の低下等を懸念する声が広がっている。スマートフォンの普及で児童・生徒のデジタル機器の使用時間の増加が問題化している中で教科書までがデジタル化されれば、子どもたちは毎日がデジタル漬けの状態となり、健全な成長が阻害されるおそれがあると多くの研究者も警鐘を鳴らしているところである。
このように教科書のデジタル化による様々な問題が指摘される中で、これまで世界トップレベルの教育を支えてきた紙の教科書の活用は今後も重要視されるべきであり、教育現場の理解も得られていない状況下においては、導入により慎重さが求められるものと考える。
よって、国においては、これからの日本を背負う子どもたちの健やかな成長のため、デジタル教科書の導入を急ぐことなく、デジタル化が及ぼす影響について研究を重ね、教育現場を含め広く国民の理解を得た上で導入の是非を判断するよう強く要望する。
上記のとおり地方自治法第99 条の規定により意見書を提出する。