地方自治体や住民、森林組合などの現場の負担を軽減し、速やかな復旧と山林再生及び将来へ向けた防災力の強化を図るため、被災地に寄り添った支援等の措置を講ずるよう強く要望する。
理由
令和8年4月22日に岩手県大槌町で発生した林野火災は、強風と乾燥した気象条件が重なり、急峻な地形も相まって、焼損面積1,633ヘクタールという平成以降で国内最大級の未曾有の規模に拡大した。地元消防団、防災航空隊、自衛隊等の懸命な消火活動により5月2日に鎮圧に至ったものの、住民の安全な暮らしの基盤である森林資源に甚大な被害をもたらし、地域経済や住民生活に深刻な打撃を与えている。
現在、被災地では復旧に向けた調査や対策を進めているが、被害規模の大きさに比して地方自治体の財政力や人的体制には限界がある。特に、現行の支援制度の要件や手続きの煩雑さが、迅速な復旧・復興への大きな障壁となっている。
よって、国においては、地方自治体や住民、森林組合等の現場の負担を軽減し、速やかな復旧と山林再生及び将来へ向けた防災力の強化を図るため、次の措置を講ずるよう強く要望する。
1 被災者生活再建支援制度の適用基準の緩和
今回の林野火災は、災害救助法が適用され、局地激甚災害の指定を受けたものの、現行制度では市町村内の住宅全壊被害が10世帯未満等の場合、被災者生活再建支援制度の適用外となる課題が生じている。大規模な山林被害を伴う林野火災の特性を考慮し、住宅の損壊棟数に縛られず、個々の被災者を確実に救済できるよう、運用の柔軟化や基準の緩和を迅速に行うこと。
2 災害等廃棄物処理事業費補助金の対象拡大と財政措置
被災家屋等の公費解体及び災害廃棄物の早期処理は、地域再生の前提条件である。地方自治体の財政負担を極力軽減するため、災害等廃棄物処理事業費補助金の早期適用はもとより、火災によって生じた各種災害廃棄物を幅広く補助対象とし、必要な財政措置を確実に講ずること。
3 観光需要の回復及び被災事業者への持続的な支援
風評被害や避難指示等による宿泊予約のキャンセル、休業を余儀なくされたことによる地域経済への影響は深刻であり、長引く物価高騰が追い打ちをかけている。国として、観光需要喚起事業に対する強力な財政支援を行うとともに、被災した事業者の施設・設備復旧を強力に後押しする新たな支援制度の創設や既存制度の拡充を図ること。
4 森林再生・復旧事業に係る手続きの簡素化及び技術的・人的支援
被害調査、復旧計画の策定、関係機関との協議等、膨大な事務が短期間に集中している。特に、地籍調査(国土調査)が未実施の区域においては、所有権界の確認や権利者調整に多大な時間を要することが想定される。国においては、各種手続きや提出期限の簡素化・合理化を図るとともに、現場に寄り添った専門職員の派遣等、技術的・人的支援を抜本的に強化すること。
5 林業・木材産業の事業継続に向けた包括的支援
甚大な被害を受けた森林の再生を担う森林組合や林業者等の事業継続に向け、被災木の運送費支援、被災木除去作業に必要な高性能林業機械の導入支援、RTK機能方式のGPS付測量機器やドローンの購入支援、被災木の円滑な販売先開拓への支援等、山林再生に向けた実効性のある財政・技術支援を一体的に講ずること。
6 林野火災の予防、啓発活動の強化
地球温暖化や気候変動の影響により、大規模な林野火災が頻発化、激甚化している。要因の多くが野焼きやたばこの不始末等の人的要因であることに鑑み、国としても全国的な林野火災に対する啓発活動を強化するとともに、乾燥・強風等の気象・地理的条件に応じた林野火災警報・注意報の発令基準の見直しや、地方自治体と連携した予防策の検討を進めること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。