高齢者が住み慣れた地域で必要な訪問介護を受けながら暮らし続けられるよう、地域の実情を踏まえた介護報酬の見直し及び訪問介護事業所への支援の拡充を強く要望する。
理由
訪問介護は、高齢者の日常生活を支えるとともに、家族の介護負担の軽減や介護離職の防止に資する、地域に不可欠な社会基盤である。
本県は、本州で最も広い県土を有し、山間部や沿岸部に集落が点在している。こうした地域では、利用者宅までの移動に時間と費用を要する上、積雪や路面凍結等への対応も必要となり、限られた職員で提供できるサービス量に制約が生じる。
県内の介護事業者からは、人材不足により訪問の依頼を断らざるを得ないことや、採算の確保が困難なため訪問介護から撤退したことなどが報告されている。事業所の減少は、高齢者の地域での暮らしの継続を脅かすものであり、事業者の経営努力のみで対応することには限界がある。
国においては、令和8年度に処遇改善加算の拡充や訪問介護の提供体制確保に向けた支援が進められており、これらは地域の介護を支える重要な取組である。その効果を地方の現場に十分に行き渡らせるためには、職員の処遇改善と併せて、燃料費等の上昇に対応できる事業運営の基盤を一層強化する必要がある。また、地域に関する既存の加算についても、長距離の移動や利用者の分散といった実態を踏まえ、算定要件や評価水準を充実させることが求められる。
よって、国においては、これまでの取組を更に推進し、地域の実情に応じた持続可能な訪問介護の提供体制を確保するため、次の措置を講ずるよう強く要望する。
1 これまでの処遇改善や提供体制確保に向けた支援を踏まえ、令和9年度介護報酬改定において、地方の訪問介護事業所の経営実態に即した基本報酬の引上げ及び支援の拡充を図ること。その際、在宅の利用者を個別に訪問する事業所の実情を捉え、地域、事業規模及びサービス提供形態別に収支を把握し、物価や賃金の上昇を適切に反映するとともに、改定の間の年度にも必要な対応を講ずる仕組みを整備すること。
2 特別地域訪問介護加算及び中山間地域等に関する加算について、対象地域、事業規模、通常の事業の実施地域等に係る要件並びに加算水準を見直すこと。通常の事業の実施地域内であっても、長距離の訪問や利用者の分散による負担を適切に評価するとともに、移動時間や距離、積雪、寒冷に伴う追加的な経費に対応した報酬上又は財政上の措置を講ずること。
3 中山間地域や人口減少地域等において、地域に必要な訪問介護を維持するため、既存の提供体制確保支援を拡充し、必要な人員及び拠点の維持に要する経費への継続的な財政支援を行うこと。特に、代替事業所が乏しい地域、休廃止に伴う利用者の引受け、事業承継、サテライトの設置及び法人間の連携を重点的に支援し、次期報酬改定までの間もサービスの空白を生じさせないこと。
4 訪問介護員の他産業との賃金格差の縮小を進めるとともに、研修受講、同行訪問、潜在有資格者の復職、常勤化及び地域への定着に対する支援を拡充すること。併せて、外国人介護人材の日本語学習及び生活支援、訪問時の安全確保及び介護支援専門員の確保、定着への支援を充実すること。
5 小規模事業所も支援を利用できるよう、加算及び補助金の申請、実績報告を簡素化し、相談支援を充実すること。また、記録、請求、情報共有に用いる機器やシステムについて、導入と継続利用への支援を充実し、現場の事務負担を軽減すること。
6 中山間・人口減少地域における新たなサービス提供の仕組みの具体化に当たっては、移動負担や事業所の不足等の実情及び地方公共団体の意見を十分に反映し、必要な地域が支援から取り残されないようにすること。その際、サービスの質と必要量及び職員の適切な労働条件を確保するとともに、国の財政措置を充実し、利用者負担や保険料の過度な増加を招かないようにすること。
上記のとおり地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。