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議員提出議案の詳細情報

発議案第1号 岩手県がん対策推進条例

番号
発議案第1号
議決年月日
平成26年3月25日
議決結果
原案可決

添付ファイル

内容

【政策的議員提案条例】
岩手県がん対策推進条例(平成26年3月28日岩手県条例第84号)

 目次
 前文
 第1章 総則(第1条−第9条)
 第2章 がん対策の推進に関する基本的施策(第10条−第26条)
 第3章 財政上の措置(第27条)
 附則

 がんは県民の疾病による死亡の最大の原因であり、県民の生命と健康にとって重大な脅威となっており、がん対策は緊急かつ重大な課題である。
 これまで、がんの予防及び早期発見の推進とともに、県民が居住する地域にかかわらず質の高いがん医療を受けることができるよう、医療体制の整備、緩和ケアの充実等様々な施策が講じられてきたところであるが、依然として、がんの罹患者数及び死亡者数は多く、さらに、高齢化の進展とともに患者数の増加が見込まれている。
 このため、がんによる死亡の減少やがん患者の生活の質の向上のためには、がんの予防から早期診断・早期治療、手術、放射線療法及び化学療法を組み合わせて行うがん医療、緩和ケアまでの包括的ながん対策が必要であり、多岐にわたる分野の取組を総合的かつ計画的に実施していく必要がある。
 このことから、県、市町村、保健医療従事者、事業者、教育関係者並びにがん患者及びその家族その他の県民が一体となって、がんの予防及び早期発見、がんの治療などがん対策に一層取り組むため、この条例を制定する。

  第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、がん対策基本法(平成18年法律第98号。以下「法」という。)の趣旨を踏まえ、がん対策に関し、基本理念を定め、並びに県、県民及び保健医療従事者の責務並びに市町村、事業者及び教育関係者の役割を明らかにするとともに、がん対策の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 (1)保健医療従事者 医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師等がん医療(法第2条第2号に規定するがん医療をいう。以下同じ。)又はがんの予防に関する業務に従事する者をいう。
 (2)教育関係者 教育に関する業務に従事する者をいう。
 (3)がん患者等 がん患者、がん経験者(がんが治癒した者をいう。以下同じ。)及びこれらの者の家族(遺族を含む。)をいう。
 (4)がん患者団体 がん患者等が主たる構成員である団体をいう。
 (5)緩和ケア 身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安の軽減等を目的とする医療、看護その他これらに類する行為をいう。

(基本理念)
第3条 がん対策は、法第2条に定めるもののほか、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
 (1)がんが県民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状に鑑み、県民自らが、がん対策の主体であるとの認識の下に、県民の視点に立ったがん対策が推進されること。
 (2)県、市町村、県民、保健医療従事者、事業者及び教育関係者の適切な役割分担の下に、これらの者が相互に連携し、及び協力してがん対策が推進されること。

(県の責務)
第4条 県は、法第2条及び前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国、市町村、県民、保健医療従事者、事業者、教育関係者及びがん患者団体と連携を図り、本県の特性及び地域の実情に応じたがん対策の推進に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。

(市町村の役割)
第5条 市町村は、基本理念にのっとり、その地域の特性に応じたがんの予防及び早期発見に関する施策を推進するよう努めるものとする。

(県民の責務)
第6条 県民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響等がんに関する知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うとともに、積極的にがん検診を受けるよう努めなければならない。

(保健医療従事者の責務)
第7条 保健医療従事者は、がんの予防及び早期発見への寄与並びにがん医療に関する専門的な知識及び技能の習得に努めるとともに、がん患者及びその家族と共通の理解の下に、良質かつ適切ながん医療を行うよう努めなければならない。
2 保健医療従事者は、県及び市町村が実施するがん対策の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(事業者の役割)
第8条 事業者は、その従業員ががんを予防し、又はがん検診を受けることができるよう職場環境の整備に努めるものとする。
2 事業者は、従業員ががんに罹患したときは当該従業員が働きながら、治療を受け、若しくは療養し、又は従業員の家族ががんに罹患したときは当該従業員が看護し、若しくは介護することができるよう職場環境の整備に努めるものとする。
3 事業者は、県及び市町村が実施するがん対策の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(教育関係者の役割)
第9条 教育関係者は、児童及び生徒等ががんに関する理解を深めるための教育の推進に努めるとともに、県及び市町村が実施するがん対策の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

  第2章 がん対策の推進に関する基本的施策
(がんの予防の推進)
第10条 県は、がんの予防を推進するため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
 (1)喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響等がんに関する知識の普及啓発
 (2)学校、病院、官公庁その他公共性の高い施設における受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)の防止
 (3)前2号に掲げるもののほか、がんの予防の推進に必要な施策

(がんの早期発見の推進)
第11条 県は、がんの早期発見に資するため、がん検診を受けやすい環境の整備に努めるとともに、がん検診の受診率及び質の向上その他必要な施策を講ずるものとする。

(医療従事者の育成及び確保)
第12条 県は、手術、放射線療法、化学療法、緩和ケアその他のがん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成及び確保のために必要な施策を講ずるものとする。

(がん医療の充実)
第13条 県は、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しくがんの状態に応じた適切かつ質の高いがん医療を受けることができるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。
 (1)専門的ながん医療の提供等を行う医療機関の整備及び機能の強化
 (2)前号に掲げる医療機関相互間及び当該医療機関とそれ以外の医療機関との役割分担の明確化及び連携の強化
 (3)県外にある医療機関との先進的ながん医療における連携の強化
 (4)手術、放射線療法及び化学療法の充実、これらを組み合わせて行うがん医療の推進並びに先進的ながん医療の推進
 (5)がん医療と歯科医療との連携による口腔機能の維持及び向上
 (6)前各号に掲げるもののほか、がん医療の充実に必要な施策

(緩和ケアの充実)
第14条 県は、がん患者ががんと診断された時から緩和ケアを適切に受けることができるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。
 (1)緩和ケアチーム(緩和ケアにおいて、多種多様な保健医療従事者が、各々の専門性を生かし、連携して医療を行う体制をいう。)の機能の強化
 (2)地域の実情に応じた緩和ケアを行う医療機関の整備の促進
 (3)がん患者がその居宅において緩和ケアを受けることができる体制の整備
 (4)緩和ケアに関する県民の理解の増進
 (5)前各号に掲げるもののほか、緩和ケアの充実に必要な施策

(居宅等におけるがん医療の推進)
第15条 県は、がん患者がその希望に応じて居宅等において療養することができるよう、がん患者の居宅等においてがん医療及び介護サービスを提供する医療機関、事業所等の連携の強化その他必要な施策を講ずるものとする。

(がん患者等の生活の質の維持向上)
第16条 県は、がんの治療及びそれに伴う症状により、日常生活に支障を来しているがん患者等の生活の質の維持向上を図るために必要な施策を講ずるものとする。

(がん医療等に関する情報の収集、提供等)
第17条 県は、がん対策に資する情報を収集し分析するとともに、県民に対しがんの予防、がんの早期発見及びがん医療に関する正確かつ適切な情報を提供するものとする。

(がん登録の推進)
第18条 県は、がんの予防の推進及びがん医療の水準の向上に資するため、がん登録(がん患者のがんの罹患、転帰その他の状況を把握し、分析するためにがんに係る情報を登録する制度をいう。)を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、前項の施策を講ずるに当たっては、がん患者に係る個人情報の保護に関し必要な措置を講ずるものとする。

(がん患者等への相談支援体制の充実等)
第19条 県は、がん患者等の苦痛及び不安等の軽減を図るため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
 (1)がん患者等及びがん患者団体に対する相談支援の体制の充実
 (2)がん患者、がん経験者及びがん患者団体によるがん患者等に対する活動の支援
 (3)前2号に掲げるもののほか、がん患者等への相談支援体制の充実等に必要な施策

(女性に特有のがんに係る対策の推進)
第20条 県は、女性に特有のがんに係る対策を推進するため、治療を受けやすい環境の整備に努めるとともに、がんの罹患率が高い年齢を考慮したがんの予防に関する知識の普及啓発その他必要な施策を講ずるものとする。

(小児がんに係る対策の推進)
第21条 県は、小児がんに係る対策を推進するため、小児がんの患者の実態把握の強化に努めるとともに、小児がんの患者の教育に係る環境の整備その他必要な施策を講ずるものとする。

(がんに関する教育の推進)
第22条 県は、市町村、教育関係者、保健医療従事者、がん患者団体と連携し、児童及び生徒等ががんに関する知識及び理解を深めるための教育が行われるよう必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

(就労の支援)
第23条 県は、がん患者及びがん経験者の就労について、がん患者等及び事業者に対する相談支援及び情報の提供の体制の整備、県民の理解を深めるための普及啓発その他必要な施策を講ずるものとする。

(研究の推進)
第24条 県は、研究機関、医療機関におけるがんの罹患率及びがんによる死亡率の低下に関する研究その他がんの予防及びがん医療の研究が推進されるために必要な施策を講ずるものとする。

(がん対策推進計画)
第25条 県は、法第11条第1項に規定するがん対策推進計画(以下「がん対策推進計画」という。)を定めようとするときは、この条例の趣旨を反映させるとともに、あらかじめ、県民の意見を聴かなければならない。
2 県は、がん対策推進計画を定めたときは、遅滞なく、インターネットの利用その他適切な方法によりこれを公表するものとする。
3 前2項の規定は、がん対策推進計画の変更について準用する。

(県民運動の推進)
第26条 県は、市町村、保健医療従事者、事業者、教育関係者、がん患者団体、報道関係者等と連携し、がん対策に関する県民の理解と関心を深めるための取組を推進するものとする。

  第3章 財政上の措置
(財政上の措置)
第27条 県は、がん対策の推進に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

  附 則
1 この条例は、平成26年4月1日から施行する。
2 知事は、この条例の施行後5年を目途として、社会経済情勢の変化等を勘案しつつ、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

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