受理番号:24
令和6年度岩手地方最低賃金改正についての請願
令和6年度の岩手県最低賃金の改正に関して、岩手労働局、岩手地方最低賃金審議会及び政府に対して意見書を提出するよう請願する。
(請願趣旨)
労働基準法第2条(労働条件の決定)は、労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものであると定めている。しかし、地域別最低賃金の影響を受ける労働者の多くは集団的労使関係になく、労働条件決定に関与することが難しい状況にある。
・国内外情勢について
現下の日本の経済は、昨年30年ぶりとなった高水準の賃上げや企業の意欲的な投資計画など、前向きな動きがみられている。
他方、長引くロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの紛争を背景として、今後、国際的に経済が減速するのではとの憶測がある中、依然として原材料価格の上昇に加え、円安の影響などから、日常生活に密接なエネルギーや食料品等の価格上昇が続いており、実質賃金の低下による消費マインドの低下を通じた消費への影響や、企業の景気減速が懸念されている。
・経済政策について
政府は、デフレ完全脱却のための総合経済対策(令和5年11月2日閣議決定)の第2章第2節(1中堅・中小企業の賃上げの環境整備、人手不足対応、生産性向上を通じた賃上げ継続の支援の(1)中堅・中小企業の賃上げの環境整備)において、労務費の適切な転嫁のための指針の策定、最低賃金の引上げ及びその支援などを盛り込んでいる。さらに、賃上げ促進税制の強化を進めるとともに、中小企業の成長分野への挑戦や生産性向上への支援を含め、賃上げ継続と支援措置を充実するとしている。
・県内の動向について
本県の令和5年度地域別最低賃金は893円(10月4日発効)と過去最高の39円の引上げとなったが、全国単独の最下位となり、年間2,000時間働いたとしてもワーキング・プアの水準とされる年収200万円にも満たず、日本国憲法第25条が保障する健康で文化的な最低限度の生活を営むことは不可能である。加えて、隣県や都市部との最低賃金の差が拡大しており、若者の県外流出による人手不足の深刻化が懸念されるなど、県内労働者の人材確保を更に厳しくする要因となっている。
・課題解決へ向けて
多くの労働者の賃金を働きの価値に見合った水準に引き上げることや、分配構造の転換につながり得る賃上げを図り、人への投資、底上げ、底支え及び格差是正に取り組むことで、県内経済の好循環を拡大させていくことが不可欠である。
また、賃上げには、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正配分を進めるとともに、賃上げ促進税制を含め、中小企業、小規模事業者支援に資する実効性のある支援制度の充実や価格転嫁の円滑化などを通じ、中小企業、小規模事業者が賃上げしやすい環境整備を行い、企業の通常の支払いの能力を高めることも重要なことから、国による更なる積極的な関与が必要である。
以上の観点から、次の事項について関係機関に対する意見書を提出するよう請願する。
(請願事項)
1 岩手労働局及び岩手地方最低賃金審議会への要請事項
(1) 令和6年度の岩手県最低賃金の改正に当たっては、従来から深刻化している本県の人口流出の歯止めや人材確保、全国との格差解消、国の2030年代半ばまでに全国加重平均1,500円となることを目指すとの方針等を踏まえ、早期に1,000円を実現すること。
(2) 令和5年度の岩手県最低賃金の改正では、単独で全国最下位となり、東北6県内でも格差が生じていることから、岩手地方最低賃金審議会においては、県外への人材流出を防ぐためにも隣県を意識しつつ、格差解消を踏まえて審議すること。
(3) 特定最低賃金の改正に当たっては、特定最低賃金の目的である労働条件の向上、事業の公正競争を確保する観点から地域別最低賃金より高い水準を確保する必要性や、これまでの産業別における経緯等を十分勘案し、受理された申し出について審議し改正すること。
(4) 県内で最低賃金を下回る賃金の労働者をなくすため、事業所に対する指導監督を強化し、最低賃金制度の履行の確保を図ること。
2 政府への要請事項
最低賃金の引上げと同時に、生活困窮から抜け出せない働く全ての労働者の処遇改善と、現下における原材料の高騰、物価高の克服のための価格転嫁円滑化など、中小企業、小規模事業者に対する実効性のある支援制度の更なる充実と利用促進のための周知を強化し、安定した暮らしの実現に向け対策を行うこと。