受理番号:35
盛岡一高バレーボール部に関わる調査検証委員会設置についての請願
(請願趣旨)
平成30年7月、県立不来方高校男子バレーボール部の生徒が、当時のバレーボール部顧問による執拗な暴言、ハラスメントによって自死に追い込まれてから早や6年が経過した。
この間、第三者調査委員会による調査、提言を踏まえ、本年5月には、教職員による不適切な指導を根絶するための、再発防止「岩手モデル」が策定された。
ところがこの後も、教育現場での暴力、暴言は後を絶たないどころか、保護者対象のアンケートを裁断した上で、結果を偽造する信じられない不祥事まで生じており、再発防止「岩手モデル」の実効性については、早くも疑問符がつけられている現状である。
一方、この再発防止「岩手モデル」策定に当たっては、盛岡一高事案から不来方高校事案に至るまでの経過を検証する作業が、県教育委員会によって行われたが、その内容は内部での学校及び県教育委員会関係者からの聴き取りに止まるものであり、十分な解明は全くなされないまま幕を閉じられた。何よりも、本来なら防ぐことができたはずの不来方高校事案を、なぜ防ぐことができなかったのかについては、その責任の所在も含めて追及されることはなく未解明なまま残されている。
不来方高校事案とは、盛岡一高事案でのこの顧問の言動が、社会的公平さを欠く、違法行為であるとの盛岡地方裁判所での判決後、控訴審での裁判が継続されている中で、この顧問が何の対応もされることなく教師、部活顧問を続け、一人の生徒を死に追いやったというこれまでにも、これ以後にも例のない、極めて重大な事案であり、この経過を明らかにすることなく有効な再発防止策が講じられるとは考えられない。
特に、盛岡一高事案については、いまだにその全貌は明らかにされておらず、当時のバレーボール部で何が行われていたのか、この実態を解明することは、盛岡一高、不来方高校事案の一丁目一番地であると考える。これまでの元部員による証言及び仙台高等裁判所に提出された元部員の陳述書から、この顧問による苛烈な暴力、暴言が明らかとなっているが、再発防止「岩手モデル」策定委員会において県教育委員会が行ったとする調査では、元部員からの聴取内容の開示はおろか、何名の元部員から聴取を行ったのかすら明らかにされていない。
盛岡一高事案発生時に、盛岡一高は、この顧問から3回聴取を実施したことを明らかにしているが、示された聴取記録はA4判一枚のメモ書きのみであり、肝心な暴力、暴言の有無についての記載は全くない。さらに、再調査要請後の盛岡一高による調査報告では、体罰はなかったとされているが、調査を受けたとされる元部員2名は、盛岡一高による調査を受けた記憶は全くないと話していることが判明しており、この極めて重大な齟齬が、なぜ生じたのかについてもいまだに解明されないままとなっている。
これについて、昨年10月に再発防止「岩手モデル」策定に関わった外部委員5名の連名で盛岡一高事案に関する調査検証委員会の設置を求める要望書が県教育委員会に提出されたが、本年6月、県教育委員会は理不尽かつ不可解としか思えない理由を付して、これを拒絶した。
不来方高校事案に関わる第三者による調査委員会の調査報告書では、盛岡一高事案に関わる裁判経過の中で、顧問による暴力、暴言が次々と明らかになったことを繰り返し述べ、県教育委員会がその事実を把握していたはずであることも、問題点として再三提起している。さらにその最後には、盛岡一高でのこの顧問による指導の問題について、学校及び県教育委員会による正確な事実認識、適切な評価及び対応及び的確な情報共有のいずれも欠けており、このことが悲惨な事案を招いたことを指摘するとともに、過去の事例と真摯に向き合うことを求めている。今回の県教育委員会による拒絶は、真摯に向き合う姿勢を自ら放棄したとしか思われない。
岩手県議会にはこれまで、平成28年10月及び令和2年2月の2回にわたり盛岡一高事案に関わる調査を求める陳情を提出したが、残念ながら対応されることはなく、この間に不来方高校事案が生じたことに鑑みると、痛惜の念を禁じ得ない。
したがって岩手県議会には、盛岡一高事案及び不来方高校事案に至る経過の調査検証が、公正な立場から厳正になされるよう、改めて調査検証委員会設置を要請するものである。
(請願事項)
盛岡一高事案及び不来方高校事案に至る経過の調査検証が、公正な立場から厳正になされるよう、改めて盛岡一高バレーボール部に関わる調査検証委員会を設置すること。