受理番号:48
岩手県における困難を抱える妊産婦に対する支援の充実・強化を求める請願
本年4月1日、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律が施行された。
同法では、生活困窮や性被害、家庭環境の破綻、DVなど、様々な問題に苦しむ女性を包括的に支えるための基本理念、国や自治体の責務が規定され、複雑化、複合化する困難に対する支援の強化が期待されている。
本県においても、本年3月にいわて困難な問題を抱える女性への支援等推進計画を策定し、相談支援を含めた取組を進めており、引き続き取組の充実が期待される。
このような困難を抱える女性への支援が進む中、全国では特に、予期せぬ妊娠を起因とする悲惨な事件が相次いでおり、残念ながら岩手県においても近年、同様の事件が発生している。厚生労働省による、子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第1次報告から第14次報告まで)では、虐待死 727人のうち、0 歳児が345 人( 47.5%)、その中でも出産後0 日での死亡は135 人(39.1%)と多くを占めており、また、こども家庭庁の統計では、平成15年から令和4年に虐待で死亡した生後0日の乳児は176人に上り、これらは全て、医療機関外での出産といわれている。また、県内各市町村の要保護児童対策地域協議会に登録されている出産前に特に支援が必要と認められる妊婦、いわゆる特定妊婦の数は、平成29年度には47件だったものが、令和3年度には178件と急増しており、岩手県における様々な困難を抱える女性、特に妊産婦に対する支援の充実は、急務であると言える。
こうした予期せぬ妊娠による悲惨な事件や、特定妊婦の増加など、深刻な状況を受け、困難な状況により悩んでいる妊婦の相談、支援を主たる目的として、令和4年8月から、民間支援団体によるにんしんSOSいわてが盛岡市において開設されており、相談支援のほか、病院や公的機関への同行支援、産前産後の居場所の提供、関係機関との連携など、包括的な支援を行っている。同事業は、生後0日、0カ月の虐待死を未然に防ぐ重要な取組であり、盛岡市内はもとより、県内外からも多くの相談が寄せられている。特定妊婦の中には、精神疾患等を抱えた方も多く、そうした状況の妊産婦、また母子を安全な環境で支援するためには、看護師の存在が必要であるが、母子生活支援施設には看護師の配置がない状況である。母子を24時間体制で見守り支援する期間である、母子生活支援施設へ移行する前の段階においては、母子の状態に応じた施設の活用が必要である。こうした期間に特別養子縁組や、里親を希望する妊産婦もいることから、にんしんSOSいわてが行っている、居場所の提供を含めた、包括的な支援は重要と考える。今後はこうした民間支援団体や、県内市町村とも連携しながら、岩手県において困難を抱える母子の命と健康を守る取組を充実していただくよう、以下のとおり請願する。
(請願事項)
1 国は、特定妊婦の支援を強化するため、妊産婦等生活援助事業を創設し活用を促していることから、本県としてもこうした国の事業を活用し、予期せぬ妊娠に悩む妊産婦の支援を充実すること。
2 にんしんSOSいわての取組は、県内のみならず、県外からも問合せがあり、予期せぬ妊娠で悩む女性に対して包括的な支援を提供しているが、こうした民間支援団体の取組と連携し、相談支援の充実、支援情報の発信に取り組むこと。
3 特定妊婦に対しては、出産後の不安を取り除く事ができるよう、居住支援も重要と考えることから、県内自治体とも連携しながら、出産後の特定妊婦が活用できるよう、母子生活支援施設の整備を推進すること。また、24時間体制で見守る必要がある特定妊婦もいることから、母子生活支援施設に移行する前段階における、居場所の提供も含めた支援の充実についても検討すること。